研究課題/領域番号 |
17K01055
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研究機関 | 就実大学 |
研究代表者 |
洲崎 悦子 就実大学, 薬学部, 教授 (10274052)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 人体に関する実習 / マクロ的実習 / 肉眼解剖実習 / ミクロ的実習 / 組織学実習 / 医療専門領域 / 薬学教員 / 高校理科教員 |
研究実績の概要 |
「人体に関する知識基盤の向上を目指した実習の提案」という研究課題を実践する2年目として、薬学部教員と高校理科教員を対象として「ミクロ的実習の体験:8月18日(土)10:30~16:00」を実施した。薬学部教員は1名のみの参加であったが、関東から遠路の参加であった。高校教理科教員は、広島、岡山地区から12名の参加があり、うち2名は昨年(2017年)度の「マクロ的実習の体験」の参加者でもあった。研究代表者と研究協力者の計4名が実習を指導した。 午前中に「組織学標本の観察のポイント」と題して1.5時間の講演を行った後、参加者の自己紹介を兼ねた昼食をとり、午後2.5時間の標本観察を行った。標本観察は各自が自由に行い、随時、指導者に疑問点を教わりながら各器官の構造と機能を学習した。同時に、未知標本のHE染色も体験し、完成標本を各自で観察して、器官の同定を行った。観察した標本は、科研費を得て購入したヒト及び動物の標本セットを用いた。参加者は、今後の教材作製に役立てるため、各自のスマホやデジカメを用いて観察画像を記録していた。また、科研費で購入した供覧システムも有効活用し、皆でモニター画像を供覧しながら各構造の識別や機能について討論して知識を深めたり、配布したSDカードへ記録をした。今回、画像の記録は動物標本に限り、ヒト標本は観察のみとした。 事前、事後に行ったアンケートの結果、参加者全員が有益であったと回答し、今後も参加をしたい、同僚にも勧めたいと答えていた。参加者は人体に関する教育に関わる中で抱いてきた疑問を解決したいという目的意識が明確で、それらを解決すると共にさらに注目する視点が増え、今後の授業で活用していきたいと答えていた。 「マクロ的実習」に比べて「ミクロ的実習」は、参加者から実習成果を広く情報提供・発信し、様々に活用したり応用できる利点があると言える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度に計画をしていた「ミクロ的実習」を予定通り実施することができた。参加者数が予想の1/2程度であり、特に薬学教員の参加が少なかったことは募集の仕方に改良の余地があると考えるが、参加者は全員、有意義な実習であったと評価をしており、これまで経験することのできなかった実習を行うことができ、今後の教育に活用できる組織画像も入手できたよい機会を提供できたと考える。 また、8/18の実習直後の8/20(月)には、ほぼ同じ実習セットを活用して「ひらめき☆ときめきサイエンス~ようこそ大学の研究室へ~KAKENHIよく知っている臓器を顕微鏡で見てみよう!」を開催することもできた。中高生17名が参加をして、組織観察をしながら楽しく大学での1日を過ごしてくれた。 さらに、8/18の参加者の好評を得てミニ実習を実施してほしいとの依頼を受けて、3/2(土)にも半日の実習を実施した。岡山地区から13名の高校理科教員の参加を得ることができた。 以上のように、8/18の実習の実施によってその輪が広がり、関連した実習をさらに2つも実現できたことは計画した以上の成果であった。「マクロ的実習」に比べると、「ミクロ的実習」は参加者が得た成果を同僚や学生達に広く情報提供・共有することで、様々に活用・応用することができることから、実習成果を広く発信・発展できるという利点があると言える。 「ミクロ的実習の体験」を実施した成果を2つの学会で発表することもできた。また、昨年度の「マクロ的実習」と今年度の「ミクロ的実習」を実施した成果を、各々論文として計2報の論文を発表することができた。 一方で、これまで行ってきた実習の具体的成果を得ることは難しく、実習に関連した成果と思われる教育内容や教材があれば、随時報告をしてほしい旨を参加者に依頼をしている。最終年度中に集まった情報はまとめて報告をする予定である。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度に当たる今年度は、これまで実施した「マクロ的実習」と「ミクロ的実習」の成果を収集し、まとめていく予定である。実習の具体的成果はなかなか得難いものではあるが、参加者とメールで連絡を取り合いながら、関連した成果の収集を丁寧に行っていきたい。 一方で、研究代表者が薬学領域に所属することから、薬学領域における人体に関する教育や実習が各大学においてどのように実施されているのかという実態の把握に非常に興味をもっている。医学部、歯学部とは異なり、薬学部における人体に関する教育は、医学部や歯学部が併設されているかどうかによる環境の差も大きく影響するため、大学による格差が非常に大きいことが推測されるため、実態調査のためのアンケートを実施する予定である。 以上の結果を総括して、3年間の報告書を完成させる予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
8/18に予定をしていた実習の参加者が予想の1/2程度であったため、参加者に支給を予定していた交通費・宿泊費がほとんど不要であったことと、研究協力者の1名(青山裕彦先生)が体調不良による入院のため実習に参加できなかったため交通費・宿泊費・謝金が不要となったことによる。 上記の余剰金ができたので、3/2に実施したミニ実習の参加者にも交通費支給を予定したが、全員が岡山地区からの参加であり、また、出張費がつくとのことで、交通費支給希望者は皆無であった。 以上のことから、相当額の次年度使用額が生じたが、最善を尽くした上でのやむを得ない結果である。最終年度には、大規模なアンケートも予定しており、1. 全国の薬学部を対象とした大規模アンケートの実施及びその報告書作製費と配布のための郵送費として、2. 3年間の本科研費の成果を総括した報告書の作成費と配布のための郵送費として、3. 成果発表のための交通費・宿泊費として、有効利用していく予定である。
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