試行錯誤を重ねることで、当初予定していた構造とは異なるものの、エネルギー収支の再現に重点を置いた地球温暖化模擬実験装置を開発することが出来た。実験装置全体の大きさは計測機器も含め1つの台車に搭載可能なサイズであるため運搬が可能であり、出前授業など様々な場面での活用が実現できる。実験装置の性能を試験するため、CO2濃度に応じた温室効果の違いが現れるかどうか、現象が定常状態に達するまでにどの程度の時間を要するか、の2点を検証することを目的とした実験を行った。まず装置内部をN2のみで満たし、その後CO2をガスカートリッジからの噴射によって一括供給した。本体部の冷却には取り扱いの容易な水を用い、水温は8℃に設定した。その結果、CO2投入による温室効果(模擬地球温度の上昇)が見られかつ30分間で定常状態に到達すること、CO2濃度によって温室効果に差が現れることが確認できた。一方で、CO2濃度に対する温室効果の感度が低く、CO2を供給した直後の極端な濃度変化などCO2濃度の変化が非常に大きい場合にしか温室効果やその違いが現れないことが判明した。そのため、冷却はエタノールを用いてより低温で行うこと、ガス調整部を設けて低濃度で調整可能にするなど装置の改良点が浮き彫りになった。これらの改善や実験条件の適正化を行うことで、質の高いデモンストレーションと将来予測に繋がる実験が実現できる見込みが示された。本模擬実験装置では、散乱性微粒子を浮遊させることでH2Oを用いずに雲の影響を模擬する(散乱アルベドを制御する)ことや、CO2が大気の主成分である金星や火星と地球との違いを示すことも可能である。よって、将来的にはふく射伝熱における多角的な学習教材としての利用が期待できる。
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