中学生や高校生だけでなく大学生や大人も含めた「理科離れ」、自然を認識する力や認識しようとする心の衰えは、科学リテラシーの低下にもつながり、社会的にも大きな問題となっている。本科研費では、学習者が主体的に、そしてお互いに対話することによって問題の本質を捉え理解を深める、アクティブラーニングの手法を用いた学習プログラムの開発を目指す。世界最先端の本格的な研究観測画像など、我々がこれまでに開発した教材の資産を活用し、学習者の知的探究心を刺激して目的意識をもった深い学習に導くことができるような学習プログラムの開発を行う。 最終年度となる今年度は、これまでに開発した星の等級と明るさに関する学習プログラムや、さまざまな銀河および太陽に関する学習プログラムについて実践・評価を行うとともに、散開星団や銀河といった宇宙の各階層の天体の距離を求める学習プログラムの開発を行った。これらの作業は、学校教員を含む研究協力者とともに、電子メールやネットワーク会議システム等を活用しつつ、適宜会合を開いて進められた。7月には長野県上田市のマルチメディア情報センターで、また1月には兵庫県明石市の複合型交流拠点でプログラムの実習を含めたワークショップをそれぞれ開催し、学校教員、科学館等の社会教育施設職員や天文普及活動を行っている市民を対象に意見の収集を行うとともに、今後の開発に向けた検討を行った。ワークショップの内容については、インターネット上で公開を行うだけでなく、集録を作成して広く関係者に配布を行っている。本研究によって、学習者が主体的に、そしてお互いに対話することによって理解を深める、アクティブラーニングの手法を用いた学習プログラムを新たに開発することができた。開発したプログラムは、天文分野だけでなく、数学等の分野に発展させていくことも可能な内容となっている。
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