ケースメソッドはこれまで総合的学習に最適な手法として開発され,経営工学から発展して技術者倫理・研究理理教育に活用されてきた。本研究ではケースメソッドを総合的な利用にとどまらず,ピンポイントの教育改善に活用する手法を開発することである。そして,その教育効果を30以上の教育プログラムを横断した共通化アンケートで評価測定するものであった。 これまでは教育プログラムを単年度ごとあるいは2年度で解析比較しててきたが,とくに本研究の最終年度は総合的に複数の教育プログラムを解析比較し,倫理教育の評価分析の見える化をおこなった。また,1つの教育プログラムを複数年にわたってマクロ解析することでカリキュラムなど倫理教育に影響を与える要素の抽出を共同研究者が分担しておこなった。 技術者倫理教育の教育効果に与える影響は,専門教育と倫理教育が主要なものであり,それ以外には人間としての道徳性の確保,社会との関係と考えられてきた。しかし,マクロ解析から研究倫理に関する要素がもっとも影響が強いことが示された。すなわち,低年次からレポートを書く上での引用ルール,学生実験におけるFFPに関する指導などが学生を育成していたことが示された。そのため研究倫理の感性を高めた状態が,学生でありながら専門職の倫理の理解が高まったことが示された。 技術者倫理教育の中でも態度・行動に関する要素は,これまで教育として設計することが困難であったため,その必要性に応じることが難しかった。しかしながら,仮想事例を導入することで自意識を高めることをできることが示された。これは本研究課題がもっとも解決しようとしたことであり,多くの時間をかけることなく学習者の態度・行動の変容を導き出すためにケースメソッドが有効であること。そして,より簡潔な仮想事例が高い有効性を示しうることを明らかにした。
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