本研究の目的は,小・中・高・大という発達・学習段階の異なる学習者を対象に,NIRS(近赤外線分光法)と視線追跡装置を用いて脳科学的見地から英語絵本の「読み聞かせ」における効果について検証し,教育的示唆を得ることである。 上記研究目的を達成するために,本研究では2つの実験を行った。1つ目は,英語絵本読み聞かせ聴取時の発達・学習段階における脳内活動の差の検証である。この実験では,発達・学習段階の異なる小学生・中学生・高校生・大学生の学習者を対象に,英語絵本の読み聞かせ聴取時の前頭前野の脳血流量の変化と視線の注視状況の観測を行った。その結果,特に小学生と大学生の間で英語絵本読み聞かせ聴取時の前頭前野の賦活部位および賦活状況の差異が観察された。2つ目は,英語絵本の読み聞かせにおいて,学習者が読み手となることにおける効果の検証である。この実験では,大学生を対象に,読み聞かせをする対象がいる場合といない場合では,読み手の前頭前野の脳血流量に差が生じるのかを観測した。その結果,聞き手の有無よる読み方の違いにより,前頭前野の賦活状況に変化が生じることを観察した。 2020年度はこれらの成果を学会で発表する予定であったが,コロナ禍で学会自体が中止となったため,2021年度以降の学会での発表準備および論文の執筆を進めた(現在投稿準備中)。今回の研究課題によって,発達・学習段階の異なる学習者における英語絵本読み聞かせ聴取時の脳内活動の差が確認されたため,今後はその要因等についてさらなる研究を行い,発達・学習段階に応じた英語絵本読み聞かせの効果的な指導法や教材開発につなげていきたいと考えている。
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