研究課題
郷土芸能において,個々の上手さや雰囲気には違いがあり,与える印象が異なる.感覚的に違うということがわかっても,具体的にどのような違いがあるのかを言葉で説明することが難しい場合がある.本研究では,(1)データで身体知の相違を可視化し説明可能になること,(2)共通の経験知を表出し共有すること,を目指した.和太鼓のバチさばきについて聞き取りを行ったところ,インパクト直前の手首の動きに特に差があり,音の響きかたが異なるという経験知を得た.上級者たちの言葉では,タメを作って最後に勢いを付ける,という説明であった.しかし,上級者で間でも(1)音は十分に出ていて響きがある,(2)音は団体内で最も大きいが響きがよくない,という音の違いがあるというが,なぜ違うのかについて説明はできていなかった.そこで,角速度センサを手の甲に付けて計測したところ,(1)聞き取り通りにタメを作っている,(2)タメが無い,という傾向が角速度の推移から分かった.タメを作らないことで,他の上級者に比べて角速度の最大値は低くなっており,それが響きのよくない音に繋がっていることが推測された.さらに,後半にタメてインパクトするはずが,上級者たちは,中級者たちよりもインパクトから最大値の位置が時間的に離れていることが分かった.聞き取りを行ったところ,上級者たちは揃って,前腕,手首の延長線上よりもさらに角度を開いてインパクトしているという.その方が良い音が出て次の動作につなげやすくなっているという.これは,指導内容の聞き取りの際には出てこなかった内容であった.以上の成果から,和太鼓のバチさばきは,手の甲に付けた角速度により傾向が分析できることが分かってきた.角速度の分布(変曲点,極大値,極小値などの位置や量)の違いを整理することにより,個々の動作の特徴を推測でき,また,経験者から知見を引き出すことを可能とできることが分かった.
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International Journal On Advances in Life Sciences
巻: 11 ページ: 128,137