研究課題/領域番号 |
17K01092
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研究機関 | 日本薬科大学 |
研究代表者 |
村井 保之 日本薬科大学, 薬学部, 准教授 (30373054)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 視覚障害 / 触図・触画 / 触指位置記録 |
研究実績の概要 |
本研究は,視覚障碍者の触指による図や形状の認知過程を解明することを目的とする.本年度は,視覚障碍者が触図を触って認識する際の指の動き(触指)を記録し,触指の定量化と分析・評価することを目的とした。触指の記録は,視覚障碍者の協力を得て,以前の研究で使用した高性能カメラとモーションキャプチャソフトを用いて行った. 協力を得た視覚障碍者の方は2名で,使用した触図は,車や花などのイラストをA4サイズで17枚用いた.触図は協力者の前方30cmの位置に固定し,録画担当者の合図で,手を前方に移動し触指を開始する.協力者には何の図かは知らせず,図が何か解るか,解らない場合は1分程度で終了した.その様子をフレームサイズ640×480,90フレーム/秒で録画した.記録した動画から触指の際の指の位置(3次元座標)をモーションキャプチャソフトで検出し,その座標から触指の定量化をおこなった.定量化の項目は,触図の同じ場所を触った回数,指先の移動方向,指先の速度,左右の指先間の距離とした.定量化した項目を分析したところ,触図の同じ場所を触った回数から,特徴となる部分や分かりにくい部分を多く触っていることが確認できた.指先の移動方向から指の動きが検出できた.移動速度からは,移動が速い場合,特徴を観察するというよりも,次の地点への移動,または,直線のような単純な場所,もしくは既知の形状の触指と考えられる.遅い場合は図が複雑か特徴のある部分で,念入りに触指し観察していると考えられる. 取得したデータ量は少なかったが触指の記録が可能であることが分かった.しかし,使用したモーションキャプチャシステムは指先の記録には不向きであり,マーカーが検出できない場合があり完全な座標データを得られないケースがあった.そこで,次年度は指先がより正確に記録できるシステムを導入する予定である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度の計画は,触指位置の検出と軌跡の描画と特徴量の算出であった.計画のうち触指位置の検出と定量化についてはほぼ予定通りであった.しかし,使用したモーションキャプチャシステムでは,指先を検出できない場合があり完全なデータを取得できないケースがあった.そこで,次年度はさらに精度の良いシステムを導入し指先位置の検出を確実にできるようにする. 特徴量の算出に関しては,取得した指先の3次元座標からいくつかの項目の定量化と分析は可能となったが,触指の軌跡の特徴量とするためには,定量化項目の検討とさらなる分析が必要である.また,触指には個人差があるので,より多くの触指データの取得も必要である. なお,当初計画では30年度以降予定していた,触指の軌跡の可視可については,触指位置の検出と定量化の過程で一部実現した.
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今後の研究の推進方策 |
触指位置の検出と定量化に目途がついたので,次年度導入予定の触指位置検出のためのモーションキャプチャシステムを用いて,数多くの触指データの取得と分析を行う.その際に,触指の個人差を出来るだけ少なくできるような図形を検討する必要がある.現在検討しているのは,四角や円などの基本図形をいくつか組み合わせて触図とすることで,触指の特徴をとらえやすくなり,個人差も少なくなり,触指の一般的な特徴を検出できるのではないかと考えている.そのためには,多くの視覚障碍者の協力が必要であるが,人数を揃えるのが難しい問題である.また,研究倫理面の処置も確実に行う必要がある.
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度交付された予算では,予定した機器が価格の面で購入できなかった.また,その後の調査で当初計画していた機器より高性能で扱いやすいものが見つかったため,次年度に繰り越し次年度予算とあわせ購入する計画である.
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