会津若松市教育委員会を介して会津若松市立一箕小学校と連携し,初等教育向けのプログラミング教育のカリキュラムづくりと授業での実証実験をこれまで実施してきた.新学習指導要領で求められている一般教科にプログラミング的思考を盛り込んだカリキュラムとして,算数の単元としては点対称,約数・倍数,四角形の対角線の性質の理解の深化のためのプログラミング教育モデルを考案した.この際,算数の理解の深化とプログラミング的思考の育成とのバランスを考慮して,2つのウェイトの置き方を変えた多様なモデルを示した. これらのプログラミング授業の学習効果は,事前・事後テストによって理解度の低かった部分を改善できることを明らかにした.また,これらの授業ではすべて,プログラムの作成過程の履歴を取得して理解度やつまずきとの関係性について分析した.この学習分析に必要な特徴量として,プログラムの構成要素の種類別の使用率と,ネスト構造の使用率を用いることで,クラス全体の進捗や,誤ったプログラムブロックの使われ方の傾向,さらには多くの学習者が作成しているプログラムから逸脱しているものの把握を可能にした.また,学習履歴を時系列的に分析することで,ブロックの削除の繰り返しや,プログラムが変化しない時間などを特徴量とすることで,学習者の状態を判断できる可能性についても明らかにした.さらに,ピア・ラーニングを実施するための最適なグルーピングを学習履歴から自動生成する方法や,反転学習のように自学自習時の学習履歴活用についても併せて取り組んだ. 新型コロナの影響で実証実験が思うように実施できない状態であったため,取得済み履歴の中での分析に注力した.
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