近年,日本の大学や短期大学,高等専門学校などの高等教育機関では、聴覚障害をもつ学生が増加傾向にあり、サポートの必要性が高まっている。2011年に起きた東日本大震災は死者15000人以上という甚大な被害をもたらしたが、中でも障害者の死亡率は、一般の人々のおよそ2倍であったことが分かっている。聴覚障害者はその障害の困難さが、外見からだけでは分かりにくいため誤解を招くことも多く、そのために周りの人間と距離をとり孤立するケースがみられる。日常生活ではそれほど援助を必要としない障害であっても、災害や緊急事態これらの不利益に目を向ける必要があり、危険を知らせることは重要である。
本研究では、聴覚障害学生が必要とする音情報に感覚的な要素を付加し、環境音を可視化できるシステムの構築に取り組む。このシステムの特徴は、聴覚障害者には気付くことが難しいとされる視野外の危険音に対して注意を促すことである。今年度は、これまで行ってきた音源の方向・音源までの距離をしめすシステムの開発経過と、それらを感覚的に理解できるインターフェースの提案を行った。 本研究ではマイクアレイを使って8チャンネルの音情報を得ることができ、これらを解析にすることにより音源定位を行うことができた。今後実験を重ねる際には、反響や雑音の影響が少なくなるよう録音環境の見直し、また音の入力に対し、感覚的な違和感が少なくなるよう微調整をする必要等を確認した。今年度でプロトタイプとしてのシステムは構築できたが、危険音データベースの充実と開発、オノマトペと危険音の関連付けの補強を行い、さらなる精度の改善に取り組んでいく。
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