研究課題/領域番号 |
17K01104
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研究機関 | 沖縄工業高等専門学校 |
研究代表者 |
神里 志穂子 沖縄工業高等専門学校, 情報通信システム工学科, 准教授 (00442492)
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研究分担者 |
山田 孝治 琉球大学, 工学部, 教授 (90274886)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | e-AT機器 / 特別支援学校 / 社会実装 / 車椅子走行サポートシステム / 言葉学習アプリ / 肢体不自由児 / 聴覚障害児 |
研究実績の概要 |
これまで,本研究では,特別支援学校と連携し,教育現場や普段の生活において必要となる視機能や動作の実態把握を行い,それに基づいたe-AT教材の開発を行い,その機器の活用を社会実装という形で実施してきた.利用する障がい児の実態に合わせた機器の段階的調整を行ない,e-AT教材を利用することによる自立的活動を促し,その利用価値の評価と波及効果の検証を目指している. 30年度は,29年度で開発し特別支援学校で社会実装した内容をフィードバックし,より児童・生徒が実際に活用できるように改良を行い,開発と社会実装実験を進めた.次の2つの教材開発の改良を行った. 1つ目はに開発に取り組んでいる,車いす走行時のサポートシステムの開発において,現在市販されている電動車いすでは,力の弱い児童が操作できず,介助者無しでは少しの距離でも自分で走行することができないという課題があり,特別支援学校の中の少しの移動であれば,介助者の見守りのもと自分で走行できるようにして欲しいとの要望があった. 2つ目は,言葉と事象の関連付けを促しつつ, ろうあ児がことば学習を行えるアプリケーションの開発である.このシステムに関しては,学習状況を評価の検討,実際に学習した言葉を語彙として習得できているかどうかの確認,助詞の習得への応用などが要望としてあった.そのため,形態素解析を用いた語彙習得判定評価方法の検討を行い,学習状況を見える化するための仕組みを検討した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1つ目に開発に取り組んでいる,車いす走行時のサポートシステムの開発において,車いす制御装置のアイディアを提案し,介助者が楽に着脱可能な補助輪タイプの機器を作成し,短い距離走行可能な車いす走行サポートシステムの開発に取り組んでいる.提案した本システムは,操作を単純にするためにスイッチ1つでモーターを制御し,専用プログラムを内蔵したArduinoとモータードライバを用いて,車いすに取り付けた補助輪型の制御を行えるように工夫している.動作としては,児童が少しの力でもスイッチをオンの状態にし,走行できるようにしている.そのため入力には,全方向スイッチを用い,スイッチがONになると,Arduinoからモータードライバに正転する制御信号が送られる.モータードライバに制御信号が入るとバッテリーの電圧がモーターに印加され,モーターが作動するようにした.
2つ目の言葉と事象の関連付けを促しつつ, ろうあ児がことば学習アプリの開発では,これまでも児童・生徒に活用してもらい,その使用感をフィードバックしてもらってい,改良を進めている.今年度は,級数などを増やし,学習段階をあげていくことによって,学習意欲を向上させ,概念的な語彙の理解度をあげるための改良を行った.このアプリを用いた学習の影響を実際にろう学校にて調べたところ,教師からの聞き取りで,児童が用いている図を使って言葉の意味を説明できていることを確認できている.しかし,実際に学習した言葉を語彙として習得できているかわからないという問題を解決するため,形態素解析を用いた語彙習得判定方法の検討を行った.文章を評価可能か,予備の検証を行った結果,助詞などが抜けていると連接コストも大きく変わり,日本語の語順評価に大きく関わってくることがわかった.しかし,正しい文章でも連接コストが高くなることがあるため,今後,その対策方法を検討していく.
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今後の研究の推進方策 |
1つ目に開発に取り組んでいる,車いす走行時のサポートシステムの開発において,コントローラやスイッチと車いす制御装置の改良を行っていき,児童・生徒の実態に合わせるための工夫を行っていく.その際,安全面や不快感などに考慮した配慮を加えることで,利用する生徒が使用しやすいように定量的に評価し,システムの改良にフィードバックする.また,試作したシステムを児童・生徒に使用してもらい,使用感についてフィードバックをもらいさらに改良を加え,自身の意思で移動を可能とすることで,できることが増え,それに伴って本人の喜びや達成感に繋がるような機器として,提供できるようにする.
2つ目の言葉と事象の学習アプリの開発では,ろう学校と連携した学習効果の定量化を行い,脳波などの生体特性を計測することで,言葉とイメージを学習する際の脳の活性部分の確認や文章として表現した際の評価などを行っていく予定である.言葉と事象の学習を文章の評価だけでなく生体情報との関連性を見い出すことで,聴覚障害児にとって学習しやすいUI/UXを意識したアプリケーションの開発と機能の追加を行なえると考えている.
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次年度使用額が生じた理由 |
予定していた脳波計測機器の購入や学科発表への参加が校務の影響でできなかったため,今年度,早い段階で評価用の計測機器の導入と開発した機器の評価を行い,学科等での発表を行う予定です.
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