研究課題/領域番号 |
17K01118
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
平井 佑樹 信州大学, 学術研究院総合人間科学系, 講師 (80640945)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | CBT / 数学証明問題 / 教育工学 / 科学教育 / 中等教育 |
研究実績の概要 |
本研究では中学校・高等学校内の数学試験を対象とし,コンピュータ上で実施する試験(CBT)において証明問題を出題することを考え,その問題形式を開発し,生徒の思考力・判断力・表現力が評価できるかという観点で評価することを目的としている。本年度では,証明問題について,現状「CBTでどう出題しているのか」「人間はどう採点しているのか」などについて文献調査,インタビュー,および保存されている採点答案を分析することで明らかにして,CBTで証明問題を提示する場合の課題を洗い出す。最終的には本研究で対象とする証明問題(図示して回答する問題は除く)をいくつかに分類し,生徒の思考力等を評価するために必要な要件を定義することを目指した。 まず,大規模共通試験において数学証明問題を出題するためには現状何が問題か,その問題を解決するためにはどのような研究・実践が必要かについて検討した。その結果,出題者側の問題として,(1)選択式問題でも記述式と同様の評価(受験した生徒の学力評価)ができるのか,(2)証明問題を選択式問題として出題できるのかについて問題を提起した。また,採点者側の問題として,(3)解答および採点に用いる媒体,(4)解答のバリエーションへの対応について問題を提起した。現在は,平成29年12月に大学入試センターが発表した大学入学共通テスト試行調査(平成29年11月実施分)の結果も踏まえ,成果を論文としてまとめている。 一方で,教育・学習用システムにおける人間の行動を観察し[Hasnineら, 2017; Ondaら,2017; Tanakaら,2018(印刷中)],特に,数学証明問題の学習システム上では,証明問題を学習するという点で一定の効果があることが認められたものの,CBTとして利用するには,利用者がシステムの使い方を熟知しているか否かで問題解決までの時間が大きく異なることを観察した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在は成果を論文としてまとめている状況ではあるものの,CBTで証明問題を提示する場合の課題を洗い出し,本研究で対象とする証明問題をいくつかに分類できているため,研究はおおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
交付申請書に記載したとおり,次年度では本年度の成果に基づいて,CBTで提示する中学校・高等学校の数学証明問題の要件を定義し,その問題形式の開発を行う。特に,開発した問題形式が,生徒の思考力等を評価できるか否かについて十分な検証を行う予定である。 次年度ではヒト対象実験(インタビュー含む)を行うため,個人情報の保護に関する法律を遵守し,信州大学ヒトを対象とした研究に関する倫理委員会の承認を得てから適切に実施する。他大学で実験を行う場合も同様の手続きを行う。これに加え,実験やインタビューを行う場合は,当該協力者およびその関係者とのインフォームド・コンセントを徹底し,実験目的・内容・手法等について十分説明した上で,同意を得てから行う。また,個人情報を含む実験結果や分析データをUSBメモリに保存しない,それらを保存する場合は暗号化する等,信州大学情報機器の学外持ち出しの禁止および制限に関する管理要項などに則り適切に管理する。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額の大部分は,数学証明問題の問題形式を実装する,またそれを用いた実験を行うためのタブレット端末の購入費用である。出題や採点に用いる端末については,十分な検討を行ってから購入すべきであると判断したため,次年度以降においてタブレット端末を購入することにした。
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