研究課題/領域番号 |
17K01135
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
多川 孝央 九州大学, 情報基盤研究開発センター, 准教授 (70304764)
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研究分担者 |
安武 公一 広島大学, 社会科学研究科, 准教授 (80263664)
山川 修 福井県立大学, 学術教養センター, 教授 (90230325)
隅谷 孝洋 広島大学, 情報メディア教育研究センター, 准教授 (90231381)
井上 仁 保健医療経営大学, 保健医療経営学部, 教授(移行) (70232551)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 学習コミュニティ / ウェアラブルセンサ / 協調関係 / 加速度センサ |
研究実績の概要 |
今年度は、加速度センサのデータをもとに学習者のある時間帯における活動状態の類似度を評価する指標を開発しこれをもとに集団内における学習者間の協調関係を推測する手法を提案し論文として発表した。 また、高サンプリングレートの加速度センサを屋外での活動を含む学習実践、および通常の授業時に学習者に持たせデータを採取し、そのデータと学習者の活動内容、およびアンケート調査などで得た学習と関わると期待される心的指標の情報等との対応関係について分析を行った。その結果、学習者の身体運動の振幅(周期)が活動内容によって特徴的な分布を見せることが確認された。また、身体運動の持続時間の統計的分布が人間が自らの感情について認識しコントロールする能力を指す情動知能と呼ばれる能力の指標と一定の相関を持つことが当該事例において推測された。これは、上記の加速度センサのデータに基づき協調関係を推測する手法、またそれらの情報をネットワーク分析の手法あるいは指標を用いて可視化・分析することなどとあわせ、センサ類のデータを実世界の学習空間における学習支援に役立てる端緒となると考えられる。 そのほか、加速度計の情報より得た協調関係のネットワーク構造のデータを学習支援システムやSNSの上でのディスカッションのネットワーク構造と相互に比較することで、学習支援者に対し学習者間のコミュニケーションを効果的に支援するための可視化の仕組みを提案した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は学習コミュニティの状態を学習支援システムや各種センサ類から得た情報を元に評価可能にすることを目指しており、今年度は先行研究のもとに高サンプリングレートの加速度センサの分析による活動状態の分析と、また各学習者において活動に影響する情意的側面、認知的側面の両方と関わる心的指標との相関の分析を行った。今年度は理論的な検討に先立って実際の教育学習活動の現場でのデータ採取を行ったためにデータの分析の範囲が限られているという問題はあるが、センサデータと対象者の心的状態の関係を分析する先行研究と学習者集団の状態を分析する本研究の代表者・分担者らのアプローチを結びつけることに一定の成果を得ており、この点から研究の進捗は概ね順調であると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
本研究では学習コミュニティの状態、特にコミュニティ全体としての知識生成能力を、集団および個人の状態とあわせて評価・測定可能とすることを目標としている。この知識生成能力は認知的な作用によるものと情意的面での作用、あるいはその組み合わせとしての全体があると考えられ、今年度の成果は主に情意的側面との関わりが深い。今後は認知的側面の測定・評価を可能とし、その上で認知・情意の両面を結びつけて評価可能とすることを目指すが、先行研究において集団内の人間の活動が他者に対しておよぼす認知的な影響と情意的な影響についての分析は必ずしも同一の基盤において行われておらず、両側面の分析・評価を結びつける方法を検討することになると考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は実験用機材として加速度センサを多数購入した。この際に機器構成と実験環境を試行錯誤することにより比較的安価に実験を行うことが可能となることが判明し、このため今年度の支出を抑えることができた。また今年度はデータ収集のために多忙となったことから研究打ち合わせのための出張を抑え、別件の出張時に研究打ち合わせを行うこととした。このため本年度使用を予定した額から若干の残額を生じている。これについては次年度に主に消耗品および国内の出張のための旅費として使用する予定である。
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