研究課題/領域番号 |
17K01137
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研究機関 | 大分大学 |
研究代表者 |
渡邊 和志 大分大学, 教育学部, 准教授 (30793476)
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研究分担者 |
吉崎 静夫 日本女子大学, 人間社会学部, 教授 (20116130)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 授業 / 授業研究 / 授業改善 / 教師教育 |
研究実績の概要 |
研究1の「再生刺激法」による授業分析の方法改善については、3つの段階について検討した。すなわち、「授業後に授業場面を子どもに思い出させる段階」、「思い出したことを報告させる段階」、「報告内容のデータ処理の段階」である。子どもに授業場面を思い出させる段階については、子どもに写真を見せた場合とビデオを見せた場合とで、報告数や思い出しやすさに違いがあるかどうかについて調べた。また、報告、データ処理の段階では、従来の質問紙調査法から、マークシートをスキャナーに読み込ませる方法にした。マークシートについては、様式、質問項目数、質問内容等の異なる数種類のマークシートのサンプルを作成し、最適な様式を検討した。なお、調査を実施した学級は、小学校(4年、5年)3学級、中学校(1年、3年)2学級であり、いずれも理科の授業で行った。さらに、「再生刺激法(ver.2)」で分析したデータが、授業改善の話合いに有効かどうかについては、小学校1校で調査を行った。その結果、教師と子どもとの認識のズレが明らかになった。 研究2の「教師の授業スタイルと子どもの内面」については、まず教師の授業スタイルを把握するための質問紙の内容の検討を行った。検討を依頼した学校は、小学校10校の校長、教頭、教務、研修主任等である。その結果をもとに、50個の質問肢からなる調査用紙を作成した。その後、小学校30校の教員(通常学級の担任、専科教員)に調査を依頼し、360名から回答を得た。その後、アンケートを集計し、現在、統計解析を行って結果の分析・検討をしている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究1については、マークシートの様式、質問項目数、質問内容等の検討とスキャナの活用により、特に「報告内容のデータ処理の段階」の時間短縮が図られた。すなわち、これまでの「再生刺激法」は、授業の分析結果が翌日以降になっていたが、その日のうちに提供できるようになった。このことは、学校現場での授業研究の新たな方法(「再生刺激法(ver.2)」)として活用可能となり、2年目以降の教師の授業改善、授業力向上等の研究にも活用が期待できる。 研究2については、質問紙調査法の質問内容を教師や子どもに理解容易な内容に改善することが課題であった。そのため、現在、教師の質問内容の検討、360名の教員の調査データの集計を終え、統計解析を行っている。質問紙作成の最終段階となっている。
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今後の研究の推進方策 |
研究1については、「再生刺激法(ver.2)」を用いて、子ども一人一人の思考過程や情意過程を把握し、子どもの学習理解、学習意欲、学習特性を明らかにする。また、授業後の教師へのインタビュー調査結果から、教師と子どもの認識のズレを明らかにし、授業改善や教師の指導力の向上につながる研究を実施する。 研究2については、教師の授業ルーチンと子どもの学習の好みを把握する質問紙を完成させる。それを用いて、両者のズレや一致点を明らかにし、教師の授業ルーチンの何を、どのように改善すればよいか、そのことで子どもの学習スタイルにどういった好影響を与えるかを検討する。さらに、継続して調査を行うことにより、この調査が教師の授業力向上をもたらしたかどうか、本人、同僚教師のインタビュー等を通して明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は、研究方法の開発を目的とした研究を行い、特に子どもが報告容易な画像の提供や調査結果の迅速な処理を行うための機器等の見直しを進めた。そのため、物品費は、当初の予算額よりやや多くなっている。一方、旅費・人件費等に関しては、研究協力が比較的近隣の市や学校から得られたこと、また機器の設置やデータの分析等については、研究協力校の教員の支援が得られたことなどから低く抑えられている。 次年度は、開発した研究方法をもとに実証研究を積み重ね、さらなる方法の確立をめざしている。また、複数の学会での発表を研究分担者、研究協力者とともに行うことも予定している。さらに、他の学校の教員、他大学との連携も図り、本研究を広く周知、定着させることを目指している。そのために、旅費、人件費等を有効に活用したい。
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