研究課題/領域番号 |
17K01139
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研究機関 | 岩手県立大学 |
研究代表者 |
市川 尚 岩手県立大学, ソフトウェア情報学部, 准教授 (40305313)
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研究分担者 |
高木 正則 岩手県立大学, ソフトウェア情報学部, 准教授 (80460088)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 教育工学 / リメディアル / 入学前教育 / eラーニング / 学習支援 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,情報系学部を研究フィールドとして,eラーニングによる入学前教育の効果的な手法を構築・提案することである.初年度は,基礎的な情報を収集し,試行的に実践を行う場と位置づけて研究を進めた.研究の目標として掲げていた3つの点について,それぞれの初年度の実績について述べる. (1)入学前教育の効果的な手法の提案:平成28年度の岩手県立大学ソフトウェア情報学部の入学前教育の結果を分析し,大学eラーニング協議会&日本リメディアル教育学会合同フォーラム2017において,その内容を事例報告をした.また,平成29年度の10月からは,eラーニングによる入学前教育の実践を行った.そこでは,学習計画を立てて進捗報告をしながら,学習者が協同的かつ自主的に学習を進めることや,学習日誌の作成など,自己調整学習を促す要素を一部に取り入れた. (2)数学とプログラミング学習環境の構築:数学の入学前教育には,eラーニングの補助教材として学習者が特につまづく点を解説した動画を提供した.また,プログラミング学習では,Scratch上でプログラミングをした成果物にピアレビューを取り入れて,学習者が相互に確認をしながら学習を進める環境を試作した.また,リメディアル的な内容を含めた数学系の科目(情報基礎数学)では,理解度向上と学習方略の改善を目的として,期末試験の予測得点と学習者データによる振り返り支援システムの開発や,誤りの可視化を目的とした問題分類演習の検討を行った. (3)リメディアル教育全体の連携:情報基礎数学においては,授業中のテストで不合格となった学生に対して,学習支援コーナーと連携した形で再テストを実施し,理解の定着を促した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は,情報系学部をフィールドとして,eラーニングによる入学前教育の効果的な手法を構築・提案を行う3ヵ年の研究である. 初年度(平成29年度)の研究は,ほぼ順調に達成できたと考えている.本研究を開始する前年度(平成28年度)の試行結果を踏まえながら,入学前教育の改善を行い,平成29年度の実践を行うことができた.そこでは自己調整学習的な要素を取り入れて,学習者主体で学習が進むように配慮した.プログラミング学習についてはピアレビューを取り入れた手法で試行することができた.また,数学のリメディアル教育において授業内で学習者が特につまづく部分を特定し,それを動画として入学前教育の教材として提供した.また,数学の学習方略に関するいくつかの試行も行うことができた.以上から,初年度として十分に研究を進めることができたと考えている. 一方で,入学前教育の高等学校教員との連携については検討に留まっており,今後の課題として残った.また,入学前教育の結果や大学入学後への影響について,まだ分析に着手できていない点も課題である.
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今後の研究の推進方策 |
初年度(平成29年度)は,ほぼ計画通りに進行できたが,いくつか課題が残されており,そこに配慮しながら,次年度以降もほぼ当初の計画通りに実践的に進めていく予定である. 今後の研究の推進については,まず初年度に課題として残された,入学前教育時の高等学校教員との連携と,入学前教育の大学入学後への影響の分析について,実現していきたい.また,平成29年度の入学前教育の結果の評価を行っていく必要がある.その評価結果を踏まえて内容を改善して,平成30年度の10月に入学前教育の実践を行っていく予定である.特にプログラミング学習については,新たに学習支援環境の導入を試みたところであり,改善すべき点が多い.研究フィールドとした学部のニーズにも合致するため,今後は重点的に実施するようにしていきたい. なお,本研究は研究代表者が所属する学部をフィールドとしているが,入学前教育の担当でないと遂行が難しいため,本研究に関する体制の維持には十分に努めていく.
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は,研究成果を発表した学会が近隣であったことや,購入予定だった物品についても,本年度は大学の機器で代替することができた.そのため,当初の予定よりも,支出を抑えることができた.また,学習環境の構築(システムの試作)も学生の研究の一環として実施できたため,謝金の支出が最低限に留まった. 本年度繰り越した分については,研究成果発表をより遠隔地で行う場合の旅費や,本年度購入しなかった物品の購入,あるいは試作したシステムの完成度を高めるために開発を委託するなどに当てていく予定である.
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