研究課題/領域番号 |
17K01140
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研究機関 | 首都大学東京 |
研究代表者 |
乳井 嘉之 首都大学東京, 人間健康科学研究科, 准教授 (20279780)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 教育支援システム / デジタルトモシンセシス / 画像再構成 |
研究実績の概要 |
本研究はトモシンセシスの諸特性を把握することが可能な画像再構成ツールを開発することが目的である。研究代表者がこれまで作成してきたシミュレーションツールは、数値ファントムを用いたシミュレーションにおいて、投影データは物質内の放射線の挙動を模擬したものではなく、単にX線管焦点から検出器までを直線でコーンビーム状に広げて作成した投影データを用いて行ってきた。本研究では実際の放射線あらゆる物質中での様々な放射線挙動を模擬することができるモンテカルロ計算コードPHITSを用いて投影データを作成して、トモシンセシスの画像再構成を実習することができる教育支援ツールを作成することを目的としている。このツールを適用することによってトモシンセシス装置がない教育施設においてもトモシンセシス画像再構成の教育効果の向上が期待できる。本研究の初年度はPHITS上でジオメトリの構築を行う際に必要となる装置の正確なジオメトリに関する情報を医療機器メーカーに依頼し情報収集を行った。年度当初からこの情報収集を開始したが、メーカーの情報開示の制約およびメーカーとのやり取り(研究代表者⇔営業⇔技術)に予想以上の時間を費やした。結局、X線管の内部構造、付加フィルタの情報およびコリメータの形状等の情報は公開してもらえず、X線管焦点から検出器までの距離、X線管焦点から回転中心の距離、実際の検出器サイズ等の情報のみとなってしまった。そこで、装置から出力されるX線スペクトルを模擬するため、X線TV装置のAl半価層の測定を行い、Al半価層のデータからシミュレーションに適用するX線スペクトルを推定した。現在はPHITSによるジオメトリが80 %程度完成している。当初の研究計画から幾分遅れているが今年度の5月中旬までにはジオメトリを完成させる予定である。今後はシミュレーションで使用する数値ファントムの作成に取りかかる予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成29年度の実施計画はPHITSを用いたジオメトリの構築およびシミュレーションの検証であったが、X線TV装置(SONIALVISION Safire)の正確なジオメトリに関する情報収集に予想以上の時間を費やし、結果として医療機器メーカーからX線管内部の詳細情報は開示していただけなかった。そこで装置から出力されるX線のスペクトルを模擬するため、半導体検出器(ThinX RAD)を用いて、X線TV装置のAl半価層の測定を行った。Al半価層を測定するためにX線管の管電圧を45kVから100kVの範囲において変化させて測定を行った。Al半価層の測定データからXCOMP5rソフトを用いてシミュレーションに適用するX線スペクトルを推定した。現在は、PHITSによるジオメトリが80 %程度完成しており、当初の研究計画から幾分遅れているが、今年度の5月中旬までにジオメトリを完成させる予定である。今後はシミュレーションで使用する数値ファントムの作成に取りかかる予定である。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度は5月中旬までに装置のジオメトリの構築を完成させて、画像再構成プログラムの高速化および検証を行う予定である。再構成プログラムは、これまでの研究で作成してきたものを活用する。適用するトモシンセシスの画像再構成は、シフト加算法と従来からX線CT装置の画像再構成法として用いられているフィルタ補正逆投影法、そして、統計的な枠組みの中で繰り返し計算を行う逐次近似的手法を予定している。画像サイズおよび逐次近似的画像再構成を考慮するとこれまでのプログラムでは高速化が図られていないため、GPU Coderを用いて高速な処理が可能なプログラムに変更し画像再構成を行うことを考えている。そして、実機のワークステーションで再構成した再構成画像と本シミュレーションで再構成した画像を比較し、再構成プログラムの有用性を検証する。また実用化のためには、可能限り画像再構成に要する計算時間を短縮する必要があるため、コンパイラの最適化も行う必要があると考えている。この点を考慮し、画像サイズを実際のものよりも縮小しシミュレーションを行うことを考えている。サイズを変更する点においては再構成画像のサイズが変わるだけでトモシンセシスの基本原理および諸特性に影響を与える訳ではないので問題がないと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成30年度(次年度)は、画像再構成プログラムの高速化を図るためGPU搭載したグラフィックボードおよびプログラムコードを最適化するGPU Coder等の購入が必要である。昨年度新たに発売されたグラフィックボードは申請当時に購入を予定していたものよりも高性能で計算処理速度が高い。当初予定していたのものよりも幾分高額となるが可能な限り処理時間の高速化を図るためには必要不可欠な物品である。このため今年度(平成29年度)の予算を節約し、差額分を次年度の予算に割り当てた。
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