本研究では物質内での放射線の挙動を模擬することができるモンテカルロ計算コードを用いて投影データを作成しデジタルトモシンセシスの画像再構成を実習することができる教育支援ツールを作成することを目的としている。これまで作成してきた画像再構成シミュレーションツールは数値ファントムを用いて透過物質中の放射線の挙動を考慮していない、単にX線管焦点から検出器までを放射状に広げて作成した投影データを用いて行ってきた。このツールを適用することによってトモシンセシスの装置が無い教育施設においても実習を通してトモシンセシスの画像再構成の理解が深まり、教育効果の向上が期待できる。研究の初年度はPHITS上でジオメトリの構築を構築する際に必要となる装置の正確なジオメトリに関する情報を医療機器メーカーに依頼し情報収集を行った。年度当初からこの情報収集を開始したがメーカの情報開示の制約および情報のやり取りで予想以上に時間を費やしてしまった。平成30年度は装置から出力されるX線スペクトルを模擬するために、X線装置のAl半価層の測定を行い、Al半価層のデータから適用するX線スペクトルを推定した。またトモシンセシスが撮影できる疑似的なデジタルブレストトモシンセシス装置のシミュレーションの構築も行った。シミュレーションのためのジオメトリは、ほぼ完成している状態であったが令和元年度に実験装置の故障により数か月間使用できない時期があった。また令和3年度から今日にかけては、新型コロナウィルスの影響に伴う家庭の諸事情、そして前年度の7月頃に研究用ワークステーションSSDの不具合によりデータが一部破損し、研究を予定通り遂行することができず2023年3月31日まで延長申請を行った。最終年度は、所属学会業務のため研究に費やすことができる時間が大幅に削減されたが、シミュレーションデータの再計算および研究のまとめ作業を行った。
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