研究課題/領域番号 |
17K01142
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研究機関 | 駿河台大学 |
研究代表者 |
竹内 俊彦 駿河台大学, メディア情報学部, 准教授 (20327290)
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研究分担者 |
加藤 由樹 相模女子大学, 学芸学部, 教授 (70406734)
加藤 尚吾 東京女子大学, 現代教養学部, 准教授 (80406735)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 集合知 / 要約 / マンガ / 実験 |
研究実績の概要 |
本研究は「nコマのストーリー・マンガをkコマに要約するときは、上位kコマを、他の多数の人が選んだ選択率の高い順に選ぶほど要約能力が高い」という考え方で、ある人のマンガ要約能力を100点満点で測定するというものである。 本年度は、研究成果のまとめと論文執筆、学会発表を中心に行った。主な成果は、[1] AI時代の教育論文誌の執筆と投稿を行い、令和2年4月2日に「マンガを用いた要約能力測定テストの提案」として掲載されたこと [2] 国際学会(Ed-Media)で学会発表を1回、行ったこと [3] 教育テスト研究センター年報に抄録本文を1報、投稿し掲載されたことである。[1]は、本研究の基礎となる「マンガを用いた要約能力の測定手法」を説明し、また初回の実験、2回目の実験の結果を示すことでその論拠としたものである。3回目と4回目の実験(同じマンガを英語にして要約させた実験、テキストとマンガの比較実験)は、多くは学会・研究会で発表済みであるが、論文としては未発表なので、今後、投稿する予定である。また本年度も、令和元年10月22日に実験を行った。具体的には、大学生60名を対象に、同じストーリーをマンガで与えたときとテキストで与えたときに、要約するときに違いがあるのかを検証した。その結果は2020年夏に発行される教育テスト研究センター年報の論文抄録に「ストーリー要約能力テストをテキストvsマンガで比較した実験」として掲載決定、令和2年8月に開催される日本教育情報学会・第36回年会国際学会で「要約能力テストをメディアを変えて実施した差異の分析報告」として発表申し込み済みである。実験の結果、同じストーリーをテキストで提示し段落で選択させるか、マンガで提示しコマで選択させるかで、要約として選択される段落/コマは有意に異なった。つまり文章の要約とマンガの要約には差異があった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
おおむね計画通りに進んでいる。申請時の予定では、令和元年度までに(1)要約能力測定テストの、Web上で動作するシステムを用いた実験、(2)マンガ要約システムのβ盤の開発と最終版の公開、(3)論文投稿と学会発表、を予定していた。現時点で(1)~(3)はいずれも完了している。(1)の実験は終了し、その結果は学会発表や教育テスト研究センター年報への論文抄録で発表済みである。(2)については遺伝的アルゴリズムを用いたマンガ要約の最終版プログラムをWebサイトで公開している。また「本日のバーガー」第2話以外のマンガを用いて、第2話と同じ基準による要約で良好な要約が得られるかの検証も行った。本研究に基づいた集合知に近くなるように遺伝的アルゴリズムのパラメータを調整し、そのパラメータに基づいて新たなマンガを要約した。しかし事前に予測していた通り、結果は人間の要約に比べて芳しいものではなかった。今後、与えるデータを変更し、パラメータを調整すれば、ある程度、要約の精度が上がる可能性はある。しかし与えるデータについて、人間が判断しないと入力が難しいデータ、たとえば「主人公が登場しているか」「冗談を言っているシーンか」といったデータが必要となると、基本データを入力するときに人間の判断が入ってしまい、ソフトによる自動要約という目的から遠ざかってしまう。ゆえに遺伝的アルゴリズムの手法を用いてマンガ要約に最適なパラメータ調整を試みるよりは、「集合知に近ければよい」というシンプルな手法を用いて受験者の要約能力を測定する研究に専念したほうがよいと判断した。(3)については本年度は論文を1本、論文抄録を1本投稿し、また1回の海外学会発表、1回の国内研究会発表をしている。今後は3回目と4回目の実験(同じマンガを英語にして要約させた実験、テキストとマンガの比較実験)について、論文を投稿する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
令和2年度は主に論文の執筆と投稿、研究成果を一般向けに説明するサイトの作成、研究最終報告書の作成を行う。論文はすでに1本が掲載済みであるが、3回目以降の実験(同じマンガを英語にして要約させた実験、開発したシステムの説明、テキストとマンガの比較実験)についても論文にして、AI時代の教育学会誌に投稿予定である。 令和2年度も、秋期(10月17日~18日)に60名程度に参加いただいて実験を行う予定である。現時点では実験の内容は、同じストーリーでもマンガの要約と文章の要約では異なる部分があるという点をさらに掘り下げる実験、もしくは、マンガの要約に集合知は非常に有効であるといういままでに得られた知見が、たとえば実験参加者を小学生にしても有効なのかを確認する実験の、どちらかを実施したいと考えている。ただし、新型コロナの影響で本年度の実験が可能かどうか、現時点では不明である。新型コロナが秋までに終息せず、本年度に実験ができなくなった場合、もしくは本年度の実験も教育テスト研究センターの厚意により会場費・謝金を節約でき、来年度に実験をしても謝金を支払う余裕がありそうな場合は、研究を来年度まで延長する可能性がある。 研究成果を一般向けに説明するサイトについては、研究概要を説明する資料やプログラムをすでにダウンロード可能であるが、今年度、一般の人が見ても興味を惹くように作成する予定である。また現在、Webでテストを受けることは可能だが、要約能力の結果を点数で示すだけであり、面白さに乏しいので、改良を予定している。
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次年度使用額が生じた理由 |
「物品費」に関してはプログラミング・サイト開発に必要な機器を購入したため予定よりも支出が超過した。「人件費・謝金」については、教育テスト研究センター(CRET)のご厚意により、学生60名に協力いただく実験にかかる会場費と謝金を無料にしていただいたため、残額が生じた。「旅費」については、海外学会での国際発表の回数を減らしたため、国内の学会・研究会における発表を多くしても、なお残額が生じた。「その他」に関しては、申請時での想定と異なり、AI時代の教育学会に投稿したが、その学会は論文誌をWeb上でオンラインで配布し、論文投稿費が不要であったため、残額が生じた。また論文の掲載決定に伴い、論文中に用いたマンガ15コマの著作権使用料が必要となったが、論文の採録日が令和2年度4月2日となったため、令和元年度からの支出は不要となった。次年度(令和2年度)は、海外での学会発表、ノートパソコン・周辺機器の購入、秋実験における会場費と謝金、論文投稿費への使用を予定している。
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