研究課題/領域番号 |
17K01145
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研究機関 | 江戸川大学 |
研究代表者 |
神部 順子 江戸川大学, メディアコミュニケーション学部, 教授 (50453478)
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研究分担者 |
玉田 和恵 江戸川大学, 公私立大学の部局等, 教授 (20299902)
八木 徹 江戸川大学, 公私立大学の部局等, 准教授 (00550881)
山口 敏和 江戸川大学, 公私立大学の部局等, 講師 (20771249)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | ICT問題解決力 / 情報リテラシー教育 / 初等中等教育 / 大学教育 / カリキュラム |
研究実績の概要 |
学士課程教育では、生涯に亘って学び続け、主体的に考え最善の解を導き出すために多面的な視点から思考・判断・行動できる人材の育成を目指している。本研究は学士力としてのICT問題解決力(問題解決力×情報リテラシー)を育成するための指導法及びカリキュラム開発・教員研修の手法を確立することを目指している。社会で求められる情報活用能力を育成するために、私立大学情報教育協会(以下、「私情協」)では「情報教育のガイドライン」を、大学卒業時に全ての学生が修得しておくべき学士力として提案している.そこで、この私情協ガイドラインに従い、自ら所属する学科のカリキュラムを検討した。学生が目標とする職業に就くために必要となる知識・技能・資質・能力を分析し、授業科目の洗い出しを行った。そして、教科に応じた指導法として「問題解決サイクルを何度も繰り返して問題解決の枠組みを修得させる指導法」、「問題解決の各段階を丁寧に学修する指導法」をそれぞれの科目及び到達目標に応じて選択する必要があることを明らかにした。 また、初年次教育における共通情報リテラシー科目において、どのような指導が効果的であるかをみるため、大学に入学した学生の情報に関する知識や態度について調査を実施した。高校までの情報に関する知識・技能については、項目間、学生間ともにばらつきが大きく、特にタイピングに関して、本人の自己評価と実際の技能には相関があるとは言えない。現行の高等学校までのプログラミング教育では, アルゴリズム的思考・論理的思考・プログラミング的思考力といったものは身についていない。 さらに、高等学校で現在情報科目を担当している教員を対象とした意識調査を実施した。教員らは現場の環境として多くの課題を持っていること、論理的思考力・問題解決力などを育成するためにプログラミング教育を必修化することへの疑問を持っていることを明らかにした.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
従来の大学における情報リテラシー教育は、時代の要請に応えているとは言い難い。小中高との連携を検討する視点はほとんどなく、個々の大学の専門性と教員の現状に応じて情報リテラシー教育がなされてきた。さらには、そのほとんどが,内容としては,コンピュータやデータ処理などのスキルを向上させることを目的としている.本研究は、「自らが立てた新たな課題を解決する能力」という視点から、内容に依存しない汎用的スキルとしてのICT問題解決力を育成しようとしている。そこで,現在、開講されている科目における現状および,初年次情報リテラシー教育としての課題を整理している。目的に合わせて対象を変えながら、アンケート調査及び技能に関する調査を実施し、分析している。特に、本研究チームが提案する問題解決の枠組みを用いた授業と、従来型の授業では学生にとってどのように反応の違いがあるのかについて蓄積することとする。 また、大学に求められる学士力の内容については、その時代に応じて変化していることは明らかである。「問題解決力のために情報通信技術(ICT)を用いて多様な情報を収集・分析し,適正かつ創造的に思考・判断し、モラルに則って効果的に活用する力」の育成・強化は,ますます重要性が高まると考えられる。そこで、情報活用の実践に関する学生の行動分析と同時に、さらにより良い解を求めるために学生が自ら動く力をどう身につけさせるかについて着目している。本研究では、作業前の「知っている」あるいは「知らない」の自覚されるステップを踏まえた上で、「調べる」ことの重要性、さらには「どうやって調べればよいのか」への段階的な指導方法は効果的であることを明らかにした。今後、より科学的に明らかにすることを目指し,まずはこれまでの試みを数値化しながら、学生の達成度を明確に把握するためのシステムを構築していくこととする。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの結果を踏まえ、問題解決指導の枠組みに沿って、アクティブラーニングを目指す各科目での指導案や教材例を体系的に作成していく。まず、学修効果を検証するためのルーブリック・ポートフォリオを開発する。実際にカリキュラム・指導法・教材を用いて実践を行い、効果を検証していく。複数の大学での実践を可能とするために指導法の改善を図る仕組みについても検討する。ルーブリックの達成レベルに応じて、いくかの教材を作成することに着手する。 また、実践と同時に、新たな指導法を確立するために基礎学力・ICT問題解決力に関する判断テストを作成し、評価尺度・テスト・教材の標準化を図る。そのために、評価尺度やテストなどの結果から学習者の類型化し、その類型に対応した演習課題、学習順序、フィールドバックなどを検討する。さまざまなタイプの学生を有する大学で、高校までの基礎学力・情報活用能力に応じた効果的な指導を実現するために、学習者を類型化するための数理的論理的能力、ICT問題解決力に関する判断テストを試作する。 高度に情報化,グローバル化している予測困難な時代において、大学における初年次の情報リテラシー教育の在り方はますます重要になっている。そこで、学習者の類型に対応したカリキュラム及び指導法・モデル授業・教材を開発し、広く大学に提供し、大学生の学力低下に対応しさまざまな学力レベルで“答えのない問題”に最善解を導くことができるICT問題解決力の育成を実現することを目指す。今後、カリキュラム及び指導法・モデル授業・教材については,インターネット上にe-learning教材として公開する予定である.そのためにも、さらに授業実践を行い、評価・改善を図る。e-learning教材として公開することで、あらゆる大学での実践を可能にする。
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次年度使用額が生じた理由 |
3月に学会発表する予定があったが、発表者が体調不良のため、参加できなった。そのため、今年度の使用額が減った。 次年度で学会発表する旅費として使用することを計画してしている。
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