研究課題/領域番号 |
17K01154
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研究機関 | 南山大学 |
研究代表者 |
蜂巣 吉成 南山大学, 理工学部, 教授 (30319298)
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研究分担者 |
吉田 敦 南山大学, 国際教養学部, 教授 (50283495)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | プログラミング学習 / WebIDE / プログラミング・ポートフォリオ |
研究実績の概要 |
Webによる統合プログラミング学習環境(WebIDE4LP)の実現を目指し,学習者の構文理解支援方法を提案し,教育者向けの進捗状況把握機能について考察した. 学習者の構文理解を支援するために, 構文図式の非終端記号のノードに学習者が記述したプログラム断片を記述した図式(構文図式インスタンスと呼ぶ)を提案した. 構文図式と構文図式インスタンスを表示するツールを試作し, 構文の誤りによるコンパイルエラーや期待する実行結果を得られないプログラムなどに利用することで学習者の構文理解を支援する.実際にツールを利用した演習により評価を行い,それらの結果をまとめて情報教育シンポジウムに投稿・発表した.ツールは単体のコマンドとして動作しており,WebIDE4LP上で動作させることは今後の課題である. 平成29年度の実績でも述べた教育者向けの進捗状況把握機能について成果をまとめ,情報教育シンポジウムに投稿・発表した.平成29年度は学習者全体の進捗状況把握方法について検討したが,平成30年度は,指導者のサポートが必要な学習者を発見する方法について考察した.学習者のプログラムと正解プログラムとの近づき具合を表す進捗度と学習者が編集作業などをどの程度行っているかを表す活動度の2つの観点を考え,横軸を進捗度,縦軸を活動度とする平面上に学習者の状況をプロットしてグラフ化し,進捗が遅く停滞している学習者や,ほぼ完成しているもののあと少しが書けずにいる学習者を発見する方法について考察した. WebIDE4LPについては,その機能を基本機能と拡張機能に整理して,クライアント側のプレゼンテーション層,サーバ側のアプリケーション層,インフラストラクチャ層からなる3層アーキテクチャを設計した.各機能の連携・制御を文脈指向プログラミングの概念を用いて行う方法について考察した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成30年度は進捗度と活動度の観点から学習者のプログラミング過程を可視化し,進捗が遅く停滞している学習者や,ほぼ完成しているもののあと少しが書けずにいる学習者を発見する方法について考察した.この考えを発展させることで,プログラミング言語の概念理解度を測定することができると考えている.
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今後の研究の推進方策 |
WebIDE4LPを3層アーキテクチャに基づいて実現する.拡張機能はサーバ側のインフラストラクチャ層として実現する.拡張機能の実行方法は,1) ブラウザ上にボタンなどを追加して学習者が明示的に拡張機能を実行,2) 基本機能など他の機能を実行したときに同時に拡張機能を実行,3) 一定時間入力がない場合などに自動的に実行,の3種類に分類できる.2)では複数の機能が連携しているが,1)でもある機能を実行しないとボタンが有効にならないなどの連携制御を行う場合がある.これらについて文脈指向プログラミングの概念を取り入れて,設計・実現する. 平成30年度はプログラム全体の進捗度を考えたが,関数や制御構造,データ構造などを単位にして進捗度や活動度をより詳細に測定することで,プログラミング言語の概念理解度を測定する方法について考察する.例えば,配列に関して何度もコンパイルエラーが発生し,編集している場合は,配列に関する理解度が低いと考えられる.正解プログラムに存在する繰返し文が記述できずに停滞している場合は繰返しに関する理解度が低いと考えられる.実際のWebIDE4LPを用いた演習データからこれらの考えが妥当か,他にどのような傾向があるかを考察し,評価を行う.
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次年度使用額が生じた理由 |
旅費で未使用額が大きかった.平成31年度は修士の大学院生が3名おり,彼/彼女らの研究発表の旅費等に使用する予定である.
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備考 |
安達 有希, 蜂巣 吉成, 吉田 敦, 桑原 寛明, 阿草 清滋. プログラミング学習における構文図式を用いた構文理解支援方法の提案. 情報教育シンポジウム (SSS 2018) にて発表済み.
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