研究課題/領域番号 |
17K01171
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
神里 達博 千葉大学, 国際教養学部, 教授 (10508170)
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研究分担者 |
細野 光章 岐阜大学, 研究推進・社会連携機構, 教授 (30525960)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | IT / ブロックチェーン / ELSI / フィンテック / TA |
研究実績の概要 |
平成30年度は初年度に引き続き、情報収集、文献研究等を進めた。それらを踏まえ、生命科学と情報工学の境界領域におけるELSI的課題についての論点をさらに洗い出すとともに、仮設的なフレームワークの構築を進めた。これらの妥当性を国際的な研究水準に照らして評価するため、2018年7月にフランスのトゥールーズで行われた、"EuroScience Open Forum (ESOF)"に参加し、内外の情報収集・専門家との意見交換を行った。 一方、これらの研究活動を進めるに当たっては、生命科学ならびに情報工学の二つの領域について、広く世界的な研究動向をサーベイすることが必要となるが、その作業を通じて、特に、情報工学と経済・金融の境界領域におけるELSI問題の検討が不足していることが明らかになった。これは本研究の開始時点では想定されていなかった新たな論点であるが、学術的に有意義であり、また本研究とも密接に関連していることから、金融技術に関するELSI的検討も、本研究の一環として同時に進めていくこととした。 特に金融工学の世界で近年、大変に注目されているブロックチェーン(Blockchain)技術は、社会的なインパクトが大きく、ELSI的な観点からも検討すべき論点が多々ある。にも関わらず、本格的な検討が不足していることが明らかになった。この点を新聞メディアで紹介したところ、出版社より書籍化の提案があり、これを契機に研究をさらに進め、ブロックチェーン技術に関する歴史的・社会的・文化的側面について考察した新書として、単著本を出版するに至った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の予定通り、欧米の研究者からのフィードバックを得るために、国際会議に参加した。一方で、ITと生命科学の共通領域におけるELSI的課題のフレームワーク案は現在も検討・構築中であり、その点では遅れがある。しかし、本研究に伴うIT・生命科学に関する研究動向のサーベイ作業中に、金融・経済領域と情報技術の境界領域(いわゆるフィンテック)のELSI的課題が、ほとんど検討されていないことが明らかになった。そこで、この点も研究課題に含めていくこととし、書籍を出版することができたため、全体としてはやや遅れている状況と言える。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの検討結果を踏まえ、生命科学と情報工学の境界領域におけるELSI的課題についての、議論のフレームワーク案を構築する。その上で、欧米の研究者からのフィードバックを得るために、カンファレンス等に参加する。 また、本研究のバイ・プロダクツとして見いだされた論点、「フィンテック領域におけるELSI的課題」に関しても、可能な範囲で検討を進めていきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成30年度は、情報技術と生命科学の境界領域におけるフレームワークの構築が遅れたこと、ならびに、本研究の過程で見いだされた新たな副次的な研究課題「フィンテック領域におけるELSI的課題」について研究・出版を進めたことなどから、若干進捗が遅れた。そのため、海外のカンファレンスへの参加が1回にとどまるなど、予定よりも支出が少なくなった。そこで次年度においては、前年に予定されていたが実行できなかった、海外カンファレンスや学会等への参加を行う計画である。
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