研究課題
本研究では、特に情報技術(IT)と生命科学の境界領域に注目し、学際的研究におけるELSI的議論のためのフレームワークを構築することを目的として検討を開始した。その結果、大きく二つの成果が得られた。まず、このような境界領域における参加型テクノロジー・アセスメント(pTA)を行うための新しい方法論として、新たに"Participatory TA in two stages model"(二段階参加型TAモデル)を構想したことである。これは、2019年度に開催された国際会議"The 4th European Technology Assessment Conference"において内容の発表を行い、参加者から貴重なコメントを得ている。最終年度である2020年度は、本モデルの有効性を検討するために具体的なテーマを設定し、この「二段階参加型TA」に基づくワークショップを行うことを計画した。しかし、コロナ禍の拡大により対面開催が困難になったことから、最終的に実施は断念した。この点については、今後の研究課題としたい。もう一つの成果は、本研究を進める上で副次的に扱うこととなった、今日的なELSI的課題の検討である。まず2019年度には、現代社会におけるITの課題をサーベイする過程で、ブロックチェーン(Blockchain)技術について検討すべきELSIの論点が多々あることが明らかになった。その検討を進め、分析結果を単著本として出版することができた。加えて2020年度は、生命科学領域のELSI的検討の一環として、コロナ禍における医療と社会の間の諸課題についても検討を行い、書籍や論文の形でまとめることができた。以上のように、本研究においては、当初予定していた学術的検討のみならず、現代社会の実際的課題の理解に寄与する研究成果も出すことができた点で、十分な成果が得られたと考えられる。
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