研究課題/領域番号 |
17K01172
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
藤垣 裕子 東京大学, 大学院総合文化研究科, 教授 (50222261)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 科学者の社会的責任 / RRI / 市民参加 / 上流工程からの参加 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、欧州で展開されているRRI(Responsible Research and Innovation)論と日本における科学者の社会的責任論の共通点と相違点を分析することである。 まず日本における科学者の社会的責任論のレビューをおこなった。日本の第二次世界大戦後から1980年代までの責任論が、1)核兵器反対の平和活動及びベトナム戦争に端を発する反戦運動と、2)公害・環境問題に端を発する科学の内部への批判と、3)パラダイム論にみられるような認識論レベルの議論と、4)全共闘の思想の直後にあらわれた科学の体制化論と、5)朝永による原罪論とが渾然一体となって共存していたことを示した。 次に欧州で展開されているRRI論については、平成29年9月にローマで開催されたRRI-SIS2017国際会議に参加し、具体的なプロジェクトの実施報告を得ることができた。RRIとは、研究およびイノベーションプロセスで社会のアクター(具体的には、研究者、市民、政策決定者、産業界、NPOなど第三セクター)が協働することを意味する。実際には、RRIは研究とイノベーションプロセスへの複数のアクターと市民の参加を含むパッケージとして社会に埋め込まれる。具体的にどのようなプロジェクトにこの予算が投入されているのだろうかみてみると、Marina Project(海洋科学の成果を市民に還元)、ASSET Program(欧州8カ国でパンデミックに関する共通の言語・アプローチの確立)、EnRRICH Program(RRIを高等教育のなかに埋め込む)、ProGReSS Project(技術と倫理の教育)、PRISMA Project(RRIの影響をモニタリング)などがある。 さらに、RRIと日本における科学者の社会的責任論の共通点と相違点については、岩波の『科学』の連載にまとめを執筆中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
今年度は所属組織で9月から3月までサバティカルを取ることができたため、研究時間を多めに取ることができた。欧州で展開されているRRI(Responsible Research and Innovation)論と日本における科学者の社会的責任論の共通点と相違点について、納得のいく形で活字にすることができた。
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今後の研究の推進方策 |
1)岩波の『科学』で連載した原稿を書籍にすること。 2)研究成果を国際会議に報告し、フロアからの意見と書籍の読者からの応答をもとに研究を先にすすめること。 3)責任論と公共空間論とリベラルアーツ論との接点についての検討をすすめること
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次年度使用額が生じた理由 |
海外調査による分析のまとめに研究時間を割いたため、国内の研究者へのヒアリング等を行うことができず、人件費・謝金が消化しきれずに終わった。来年度にまわし、来年度直接経費とあわせて使用する予定である。
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