研究課題/領域番号 |
17K01173
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
調 麻佐志 東京工業大学, リベラルアーツ研究教育院, 教授 (00273061)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | ランキング作成目的 / 科学計量学 |
研究実績の概要 |
平成29年度は世界大学ランキングについて、過去の変遷も含めてその計量手法について確認を行った。 ついで、主たる世界大学ランキング作成機関関係者(上海交通大学世界一流大学センター、Times Higher Education社、QS社)を対象とするインタビュー調査を企画した。インタビュー調査の実施にあたっては、まず事前に文献・Web調査を行い、各ランキングの計量手法およびその変遷をまとめるとともに、手法の問題点やその代替的な選択肢などについても指摘できるように準備を行った。具体的な調査については当初予定の順番を入れ替え、29年度は上海交通大学世界一流大学センター、Times Higher Education社の関係者に対してインタビューを行った(後者は国内で実施した簡易的なものであり次年度以降に本格的なものを実施する)。 上海交通大学が世界大学ランキング(ARWU)を作成する目的等については、当初理解していたものとは異なっていた。中国政府がワールドクラスの大学を育成するために指定する大学群の一つとして上海交通大学を選定し、大学側がその目標を到達する施策等を策定・実施するにあたって、ワールドクラスの大学の在り方や彼我の差を理解する目的でARWUを策定したのであった。インタビューからまた、ARWUの構成には多くの問題点を指摘できるものの、ランキング作成に費やせる資源に制約があったため、いわば予算の範囲内で済むようにランキングを構成する指標は選定されたこと、さらには、優れたランキングを作成するのではなく、大学経営上の目標を定めることがランキング作成の目的であったことを勘案すれば、ARWUは十分に「合理的」なものであることが確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画では29年度は主たる3つの世界大学ランキング作成機関関係者(上海交通大学、THE社、QS社)へのインタビュー調査の準備を行い、さらにTHE社とQS社を対象としてインタビュー調査を実施する予定であったが、都合によりQS社と上海交通大学を入れ替えたものの、ほぼ計画通り2機関を対象としてインタビュー調査を実施できたため、おおむね順調と判斷した。
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今後の研究の推進方策 |
30年度は前年度に引き続きインタビュー調査を行う。平成30年度は残された英国でのインタビュー(QS社およびTHE社)を実施する。さらに、3機関のインタビュー調査の結果をまとめ、計量手法の詳細について確定する。 この確定した結果に基づいて、文献DBからデータを引き出し、シミュレーションを行い、理論的な検討とその結果を併せて、各ランキングのmethodologyが実際に何を測定しているのかを明らかにする。たとえば、ランキングを構成する項目citationは、各大学が生み出した研究成果のインパクトの平均値を表すとされているが、現実にはその大学の教員数名が特定のビッグプロジェクトに参画しているかによって引きずられることはよく見られる。そのような極少数の影響を適正レベルにするような処理などのシミュレーションを行って、実態として何が計量されているのかを明らかにする。 平行して、国内関係者およびアジアの有力大学関係者と大学行政関係者へのインタビュー調査を実施する。主な調査項目は、世界大学ランキングに対する基本的な考え方、政策あるいは大学運営との関係、具体的な対応策(ランキング向上策)の有無とその内容、などである。 新聞記事の内容分析を行うために、国内4紙(朝日、讀売、毎日、日経)、海外数紙より世界大学ランキングに関係する記事データを収集する。海外紙についてはWebによる予備調査を行い、その結果を元にデータを収集する新聞を選択する。一方、国内紙については先行して内容分析および共語に基づくネットワーク分析などを実施し、世界大学ランキングがどのような文脈でどのような問題を対象に語られているかを分析するとともに、計量手法や数字の意味等について「適切な」理解に基づいた記事がかかれているかなどを確認する。 以上をまとめて大学ランキングの数字がどのように社会の中で「独り歩き」していくかを明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
インタビュー調査の実施期間について、当初計画と実施年度を入れ替えたため、前年度旅費(連合王国→中国)が減少し、代わりに次年度旅費(中国→連合王国)が増加した。
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