研究課題/領域番号 |
17K01174
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研究機関 | 総合研究大学院大学 |
研究代表者 |
伊藤 憲二 総合研究大学院大学, 先導科学研究科, 准教授 (90345158)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 科学史 / 物理学史 / 冷戦期科学 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、なぜ、どのようにして日本で高エネルギー物理学が行われるようになったのかを明らかにすることである。この問題には多くの側面があり、本研究では学問的発展・国内での制度的発展の側面、国際的背景の側面、そして社会文化的背景の三つの観点から分析する。 平成29年度は、全体的な資料調査・資料収集を行いつつ、これらをめぐる方法論的問題に重点をおいた。ここで問題になる方法論的問題とは、冷戦期科学をめぐる社会文化的背景と、学問的内容との関係を歴史研究としてどのように扱うかという問題と、国際的な知識移転の問題に関わるものである。日本における高エネルギー物理学の成立は、部分的には国外からの知識の移入としてとらえることができるが、当然ながら、それだけではなく、国内における学問的な発展と、研究者コミュニティの発展があった。このような状況を整理して捉える枠組みを探求することが今年度に取り組んだ方法論的課題である。 具体的には、研究計画に示したように、出版文献の収集と国内での資料調査を行いつつ、方法論的問題について考察を進めて、研究発表を行った。研究計画の通り、ワシントンの米国国立文書館において日本における高エネルギー物理学と米国とのつながりに関する資料調査を行い、さらにこの年に開催されたリオ・デ・ジャネイロにおける国際科学史技術史学会において、科学的知識の伝達の歴史的研究に関する研究発表を行った。 また、この年度の間に本研究計画から発展させて、より広く冷戦期科学史についての研究を進め、二つの国際共同研究を立ち上げた。一つは、核研究と外交に関する共同研究であり、もう一つは占領期日本の科学政策に関する共同研究である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
予定していた学会発表および資料調査を研究計画通り行った上に、本研究課題から発展して、新たな国際共同研究を立ち上げることができたため。
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今後の研究の推進方策 |
研究の進展に即して、平成30年度は、申請時の研究計画を次のように変更する。もとの計画では、日本における高エネルギー物理学の内的発展と制度的背景についての研究発表を9月にロンドンで開催されるヨーロッパ科学史学会において発表し、併せてロンドンで資料調査を行う予定であったが、このテーマでヨーロッパ科学史学会において発表するのはあまり有益ではないと判断して取りやめ、これについては国内の学会で発表する方法を探ることにした。同時に旅費滞在費の高い夏に英国で資料調査することは避けることにして後回しにし、31年度に行う予定だった米国内での資料調査をより優先度が高いとして、この年度のうちに前倒しして開始することにした。また、上述のように本課題と関連して立ち上げた国際共同研究は平成30年度から本格的に開始するが、これは本研究課題とは別財源で行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
残額があまりにも小さく、有効な使用方法がなかったため。次年度において消耗品等の使用に充当する。
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