2022年度は、日本における高エネルギー物理学成立の社会的背景についての研究を進めた。本年度は、最終的な成果を国際学会で発表することを計画し、英語圏の科学史において最も水準の高い国際学会であるHistory of Science Societyの2022年年会に応募し、採択された。しかし、依然としてコロナの状況が楽観できず、さらに円高等による旅費の高騰があり、資料購入の費用も予定よりもかさんだことから、対面での学会参加は見送り、オンラインでの参加とした。History of Science Societyの年会準備委員会がコロナの状況に応じて今年度から新たに年会にVirtual Festivalと称するものを設けられ、年会に採択された発表のうち、希望者が年会の会期の後に、オンラインで発表の機会を持てるようになり、それを利用したのである。 また、本研究のなかで進めてきた科学と外交の歴史的研究の理論的な研究についても、その論文がThe British Journal for the History of Scienceという、、英語圏でよく読まれている雑誌にアクセプトされ、すでにオンライン出版された。 研究機関全体として、本研究では日本における高エネルギー物理学成立に関する実証的な調査をすすめ、その国内的な社会的文化的条件との関連性を明らかにすると同時に、国際的な側面、とくに日米間の研究者間の協力や、競争、そして、日米科学協力のような国際的な学術交流の役割を明らかにした。そして、そのような国際的な側面をとらえるための科学と外交についての科学史研究の基礎的な方法論の開拓を推進し、それに関して大きな成果をあげた。 他方で、日本における高エネルギー物理学の成立に関する実証的な研究については、国際学会での発表は行ったが、まだ論文化はしておらず、これが今後の課題である。
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