現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度に収集した『軍医団雑誌』(1900-1943年)および『軍胸』(1921-1929年)は、戦前日本の結核および軍隊胸膜炎を疫学的に研究する上で、もっとも重要な史料である。今年度は、両者の内容を詳細に検討し、近年の結核をめぐる歴史研究も踏まえ、科研課題「20世紀日本の長期療養型疾患の歴史」(代表:鈴木晃仁)主催の研究会において、「結核の歴史をめぐる近年の研究動向:軍隊胸膜炎問題にみる戦前日本の結核」を口頭発表した。同報告では、結核のみならず、ハンセン病、精神疾患などを対象とする研究者と有益な情報交換を行うことができた。 戦前に設置されていた結核研究機関について、昨年度に整理した組織に関する基礎的な情報を基に、各機関の図書および逐次刊行物の調査および収集を継続した。 今年度は、結核の歴史との比較の目的から、TOMO ICHIKAWA, "Japanese Occupation and Public Health in Qingdao:The Case of the Cholera Epidemic in 1919" Acta Historica Leopoldina(69), pp.235-242, 2018.および市川智生「ドイツから見た明治日本の感染症制御」『歴博』 (209) 11-14頁、2018年7月を執筆した。前者は、明治期日本の海港検疫を感染症制御の手法としてとらえ、従来指摘されてきたような外交上の問題という側面以上に、医療水準の際が検疫成功の決め手になっていたことを論じた。後者は、第一次世界大戦後に日本が軍政を展開した青島で発生したコレラ流行をとりあげ、現地社会への介入が防疫の争点となっていたことを指摘した。
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