「幕末・明治初期における気象観測の実態および観測ネットワーク構築過程に関する研究」は、科学史研究者と気象学者が意見交換しながら、国際気象学史委員会のネットワークを活用して国内外の研究者と交流し、日本の気象学史を再検討するとともに、日本の文脈における気象学史を国際的に発信することにより、地球規模の気象学史にも新たな知見をもたらすことを企図するものである。 補助事業期間延長が承認されたため、2021年度はイギリスのNational Meteorological Library and Archive、アメリカのSmithsonian Institution Archives、National Archives、および国内の公文書館等にて補完調査を行う予定であった。しかしながら、新型コロナウイルス感染症の影響により、海外調査を行うことができず、また国内も移動が制限されたため、近隣の沼津市明治史料館のみで調査を行った。同館図書館では、沼津兵学校で教鞭をとった後、開拓使勤務を経て内務省にてスミソニアン気象観測法を翻訳した保田久成に関する資料を確認することはできなかった。山田昌邦については数学関連の資料を多く確認でき、数学の実地測量について「此測器ナクシテ目ニテ遠近ヲ測リ」という記述を確認した。このほか、私家版の刊行物を確認することができた。 最終年度のため、これまでの調査結果の整理・検討を行い、開拓使の日本人教師や役人と気象学との関わりを探究し、その結果を『東海の科学史』に投稿するとともに、7月末にオンライン国際会議26th International Congress of History of Science and Technology にて口頭発表を行い、意見交換を行った。 また、12月に、第10回気象学史研究会「気候変動解明への歴史からのアプローチ」(主催:日本気象学会気象学史研究連絡会)にて招待コンビーナおよび司会を務めた。
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