研究課題/領域番号 |
17K01186
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研究機関 | 大阪経済法科大学 |
研究代表者 |
永平 幸雄 大阪経済法科大学, 公私立大学の部局等, 教授 (20122195)
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研究分担者 |
小長谷 大介 龍谷大学, 経営学部, 教授 (70331999)
塩瀬 隆之 京都大学, 学内共同利用施設等, 准教授 (90332759)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 物理教育史 / 科学機器 / 史料 |
研究実績の概要 |
本研究は、三高由来、四高由来の教育用物理実験機器を取り上げて3つのテーマで物理教育史研究を行うものである。3テーマはそれぞれ①「旧制高校における太陽光利用・光学演示実験―旧制三高四高の事例―」、②「明治以降のアトウッド試験器等の落下教育機器史の解明」、③「19世紀以降における電流・磁気作用の教育実験機器変遷史の解明」である。その際、当該機器に関する文献研究を行うとともに、それらの機器の再現実験を行い、歴史的機器現物のもつ、非言語知識としての「もの知識」、「動作知識」を得て、文献の言語知識、再現実験による非言語知識を統合した物理教育史研究を行う。 再現実験は同時進行させることはできないので、3年にわたって①→②→③の順に文献研究・再現実験を行う計画を立てた。本年度の計画では①の文献研究・再現実験・動画作成、②の文献研究・予備的再現実験であった。 ①②の文献研究については5月~7月に3回、連携研究者の渡邊雅之助教も含め4人の研究者で総合博物館にて本科研費・研究会を開き、対象とする三高四高由来実験機器、当時の物理実験書等の基本文献を確認しつつ、2テーマの文献研究の成果を共有した。 ①太陽光利用・光学演示実験の再現実験を完了させた。三高由来の「ヘリオスタット」(日光顕微鏡・明治22年購入)は太陽光を室内に取り入れる共通の器械として使用し、2つの再現実験「友田式スペクトル投影装置」(明治43年購入)と「光の再合成器」(明治35年購入)の実験を行った。その再現実験を動画で撮影し、学会発表に使用できるように編集した。また一般公開用の動画としても撮影・編集した。一般公開用動画作成過程については、日本デザイン学会にて発表した。②アトウッド落下試験器の再現実験については、レプリカを作成途中で、試験的な再現実験を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は①については文献研究と再現実験、②については文献研究と予備的再現実験を行う計画であった。テーマ①については順調に進行し、文献研究・再現実験のみならず、さらに進んで(2018年度予定の)再現実験の公開用動画作成まで行うことができた。ただし、このテーマについては再現実験後の更なる文献研究が必要と考えている。テーマ②については文献研究を行い、レプリカの作成しつつ試行的再現実験の段階にあり、再現実験についは予備的研究段階と言える。このことから、2017年度の①②の文献研究→再現実験の課題について、達成度は順調と評価できる。 しかし①の再現実験後の高段階の文献研究が必要であるので、その点で「おおむね」順調と表現できる達成度である。
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今後の研究の推進方策 |
本年度の課題はテーマごとに異なる。テーマ①については再現実験をもとにした更なる文献研究を進める。三高四高由来の実験機器を対象としているので、旧制高校における物理教育の文献研究が重要であるが、この分野の研究はほとんど未開拓分野と言えるので、丹念な文献収集・読破を行っていく。 テーマ②アトウッド落下試験器については、レプリカを完成させ、再現実験を成功させ、その動画作成を行う。2017年度の試験的レプリカ作成で、現物のもつ「もの」情報が重要であることがわかったので、四高由来の「アトウッド落下試験器」(石川県立自然史資料館蔵)の現物調査からの情報をもとにしてレプリカ作成・再現実験成功につなげる。その上で文献研究と結合させて、学会発表を行う。 テーマ③電流・磁気作用の教育実験機器については、三高由来の実験機器のなかで再現実験の可能なものを見つける。電磁気関係の歴史的実験機器は、光学機器と異なり、さびや断線等破損が生じやすく、再現実験できる機器を選び出すのが困難である。昨年度の予備的調査の結果、ダルソンバール検流計(三高由来・大正6年)が最適であることがわかった。本年度はその文献研究と再現実験を実行する。
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次年度使用額が生じた理由 |
2017年度使用額で、予定額を下回った費目のほとんどを占めるのは物品費で、予定額90万円に対して使用額は31万円で、約60万円が残った。物品費の細目で不使用額の多くを占めるのが、実験器具類とレプリカ制作費である。実験器具類は、歴史的実験機器を再現実験に使用する場合に、必要となる工具類や関連計器類(たとえばレーザー発振器)であるが、テーマ①太陽光利用・光学演示実験では、総合博物館所蔵の実験器具類を利用できたので、その費用を大きく節約できた。レプリカ制作費については、テーマ②アトウッド落下試験器ではレプリカ制作は予備的段階なので簡単な材料を利用したりして使用額を低くすることができた。しかし本年度のレプリカ完成・再現実験完了への過程の中でレプリカ制作費は必要となるのでそこに不使用額を使用しなければならないと考えている。テーマ①で節約できた費用については文献研究の調査費に利用したいと考えている。旧制高校の物理教育史研究は未開拓分野で丹念な資料収集が必要であることがわかったので、図書館調査(調査出張費等が必要)、図書購入等に利用したいと考えている。
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