本研究は、三高由来、四高由来の教育用物理実験機器を利用して3つのテーマ(①旧制高校における太陽光利用・光学演示実験―旧制三高四高の事例―、②明治以降のアトウッド試験器等の落下教育機器史の解明、③19世紀以降における電流・磁気作用の教育実験機器変遷史の解明)で物理教育史研究を行うことを目的としている。その際、機器現物を使用するもしくはそのレプリカを作成して、その歴史的実験機器の再現実験を行い、その実験から得られる知識(言語知識と非言語知識の両方を含む)を得て、当該機器の文献研究と統合して、文献研究のみの研究とは異なる物理教育史研究を行うことを最大の特徴としている。 初年度の2017年度は、①~③の文献のみによる物理教育史研究と①の再現実験を行った。その成果は、2019年1月の博物館明治村(愛知県犬山市)の旧制四高物理実験室でのヘリオスタットを利用した分光実験の再現の試みにつながっていった。 2018年度は、②と③の再現実験およびその再現実験で得られた知識をもとにした文献研究を行った。その成果は、②については日本物理学会で2件、日本科学史学会西日本大会で1件、③については日本物理学会で2件の報告として結実した。 2019年度は特に②に絞った。②の再現実験で得られたアトウッド落下試験器の動作知識は、その試験器の物理教育史上の発展を解明するのに特に重要な意味を持つと判断されたからである。錘の落下開始時と着地時の把握の困難さが落下試験器の重要問題であることが再現実験から判明し、それが落下試験器のその後の改良の方向を示したことが判明した。この成果は日本物理学会で「明治後期~昭和初期におけるAtwood落下実験器の変遷」と題して報告した。さらに①~③の再現実験についてはすべて動画を作成し、今後の物理教育史研究の資料とした。
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