研究課題/領域番号 |
17K01187
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研究機関 | 畿央大学 |
研究代表者 |
小野 尚香 畿央大学, 教育学部, 教授 (70373123)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | スウェーデン / 特別支援教育 / 基礎学校 / 就学前クラス / 就学前学校 |
研究実績の概要 |
(1)神経発達臨床所見に関わる医学理論の分析:C.ギルバーグならびにE.ファネールらのグループが行っている、神経発達障害のある子どもたちの臨床研究について、特にファネールが関わった自閉スペクトラム症(ASD)の疫学研究を論文としてまとめて日本発達障害学会誌に投稿し受理された(平成30年6月発行予定)。 (2)スウェーデンにおける特別な教育的課題のある子どもたちの教育・支援に関する調査:スウェーデンストックホルム市を中心に訪問し調査研究を行った。今回教育関係で、基礎学校(日本の小学校中学校に相当)4校、就学前学校(日本の幼稚園、保育園、こども園に相当)2校を訪問した。①基礎学校では、特別支援教育とインクルーシブ教育との両立について焦点を当てた。1校では、子どもが有する能力を詳細に検討し、領域ごとに個別の取り出しを行ったり、通常学級で学ばせたり工夫を行っていた。また他の1校では少人数学級で、その中に注意欠如・多動症、ASD、ダウン症などが含まれ、2名の担任のうち1名が小学校1~3年生まで担任として持ち上がり、SSTを取り入れながら、子どもの主体性・子どもの認知を育む取り組みを行っていた。②小学校1校では、2018年度から義務教育に組み込まれる就学前クラスの特別支援教育について参与観察した。各児童にiPadを貸与し、教室の壁は構造化され、算数計算につながるような課題も示されていた。③就学前学校の参与観察では、レッジョ・エミリア教育法を基にした、活動テーマを決めたプロジェクトと製作も含めたあらゆる手段を活用した記録が行われており、特別支援教育も視野に入れた教育が提供されていた。 (3)スウェーデンの就学前クラスに関する保護者向け公報の解説:スウェーデン政府が提供している、英語で書かれた「就学前クラス」に関する公報の抄訳の論文発表を行い、スウェーデンが目指している教育の一端を示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
C.ギルバーグならびにE.ファネールのグループが行っている、神経発達臨床所見に関わる医学理論については、ASDに関する疫学研究の論文投稿に加えて、ASDの病態について、ビタミンDならびに遺伝に関する論文をまとめて投稿を行った。 特に力を注いで行った、神経発達臨床所見を呈する子どもに対する支援については、サンドビッケン・モデルを包括するブリガンシステムを中心に、教育・保健医療などの施設を訪問して現状を確認した。さらに、基礎学校、就学前クラス、就学前学校における、特別支援教育とインクルーシブ教育の在り方について参与観察や書籍情報を通して、細かく確認することができた。その中には、アウトドア活動の内容やスヌーズレンの利用方法なども含まれており、おおよそ、予定通りの研究が行えたと判断する。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方法については、当初予定した内容の延長上にあると予想している。C.ギルバーグならびにE.ファネールらが行っている医学的知見と教育・福祉現場での実践との双方向ダイナミクスについて、教育・保育現場での参与観察や担当専門職に対するインタビューを通して言及していく。また、ストックホルム地域に加えて、サンドビッケン市やイェーブレ市があるイェーブレ地域の参与観察も加えていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
消耗品費として申請していた、発達障害関連書籍の購入が予定より少なかったため。
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