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2017 年度 実施状況報告書

「日本の魚類学の父」田中茂穂文書資料の分析による動物学黎明期の解読

研究課題

研究課題/領域番号 17K01190
研究機関独立行政法人国立科学博物館

研究代表者

川田 伸一郎  独立行政法人国立科学博物館, 動物研究部, 研究主幹 (30415608)

研究期間 (年度) 2017-04-01 – 2020-03-31
キーワード科学史 / 動物学史 / 脊椎動物
研究実績の概要

本課題は東京大学総合研究博物館において発見された,明治後期から戦後にかけて活躍した魚類学者,田中茂穂の残した文書資料を整理・分析し,当時の動物学を俯瞰することを目的とする.研究課題採択前より,関係者と資料の利用・整理についての打ち合わせを行った.採択後,東京大学総合研究博物館から研究代表者の所属する国立科学博物館筑波研究施設へと資料の輸送を行い,燻蒸作業後に書簡資料の整理に着手した.書簡はハガキの他に封筒に入った状態の文書を含み,これらの多くが年代ごとに紐で結わえられていた.一通ずつ埃を払いながら,ファイリングを行ったところ,当初想定していたよりかなり多くの資料が含まれることが判明した.そのため29年度は資料の整理作業に大半の時間を費やした.現在は書簡資料のデジタル画像化を開始したところである.
ファイリングを行いながら,差出人のチェックを合わせて行った.その結果,田中が当時行っていた魚類の地方名調査の返答として,各地方の水産試験場などから回答が送付されたものが多いことが分かった.また多くの分野を問わない動物学者との交流が垣間見え,鳥類学者の黒田長禮やクモ類学者の岸田久吉といった人物から宛てられたもの,さらに田中と同郷の植物学者牧野富太郎・物理学者寺田寅彦といった著名人からの書簡も多数みられた.国外からの手紙も少数あり,特に田中が師事した米国スタンフォード大学のDavid Star Jordanからの手紙は,当時の研究交流を調査するために有用なものと考えられる.30年度以降は全ての書簡をデジタル化する作業を継続し,書簡の分析を合わせて行っていく予定である.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

4: 遅れている

理由

29年度の調査開始により,想定していた資料数1000点を大幅に上回る書簡資料が存在することが判明した.そのため現在のところ書簡資料のファイリングが完了したところで,当初予定していた資料のデジタル化はようやく着手した段階である.そのためファイリングの途中からは書簡の差出人をチェックするなどを並行して行うことによって,おおざっぱな資料の内訳が把握されつつある.
研究代表者の所属先での業務としても,当初予定していなかった特別展の監修者としてかかわる必要が出たことも,遅れを招いた一因である.

今後の研究の推進方策

29年度の後半になって,資料数が膨大であることが判明したため,ファイリングと並行して差出人チェックを行うことで対応してきた.これにより研究対象となる田中周辺の重要人物についてはある程度把握されている.これらの人物に絞り込みを行いつつ,文書の解読などを進めていく.研究の焦点として,第一に挙げるのは,田中の実質的指導者の立場にあった,米国スタンフォード大学のDavid Starr Jordanから送られた手紙である.また田中と同郷の植物学者である牧野富太郎からの手紙は非常に多く,有用な情報源となりそうである.牧野植物園には牧野が残した書簡が保管されており,すでに整理が完了され,近年その一部をまとめた書籍が出版されている.これらの内容と照らし合わせることにより,土佐生まれの生物学者二人の交流の様子がさらに詳細になると期待できる.
なお,現段階での遅れを解消するために,資料のデジタル化に作業補助者を増員することを予定している.

次年度使用額が生じた理由

資料数が膨大であることが判明したため,29年度に予定していた資料のデジタル化の大部分を30年度に見送ることとなり,それにかかる人件費等の諸経費がかからなかったため,次年度使用額が生じた.30年度は作業人員を増員するなどして,次年度使用額を使用する計画である.

  • 研究成果

    (5件)

すべて 2017

すべて 雑誌論文 (2件) (うちオープンアクセス 2件、 査読あり 1件) 学会発表 (3件) (うち招待講演 1件)

  • [雑誌論文] 哺乳類学がなかった時代の日本のMammalogy2017

    • 著者名/発表者名
      川田伸一郎
    • 雑誌名

      哺乳類科学

      巻: 57 ページ: 119-134

    • オープンアクセス
  • [雑誌論文] コウライムササビ(Petaurista leucogenys hintoni)とコウライキテン(Martes melampus coreensis)の原記載に用いられた標本の再発見2017

    • 著者名/発表者名
      平田逸俊・下稲葉さやか・川田伸一郎
    • 雑誌名

      哺乳類科学

      巻: 57 ページ: 111-118

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] 哺乳類の名前,知ってますか?2017

    • 著者名/発表者名
      川田伸一郎
    • 学会等名
      日本哺乳類学会2017年度大会(富山)
  • [学会発表] ミズラモグラの分類について2017

    • 著者名/発表者名
      川田伸一郎
    • 学会等名
      日本哺乳類学会2017年度大会(富山)
  • [学会発表] 日本の動物を世界に広めた標本商 アラン・オーストン2017

    • 著者名/発表者名
      川田伸一郎
    • 学会等名
      日本鳥学会2017年度大会(筑波)
    • 招待講演

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公開日: 2018-12-17  

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