研究課題/領域番号 |
17K01192
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
谷口 陽子 筑波大学, 人文社会系, 准教授 (40392550)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 二水石膏 / グラウト / モルタル / 遅延剤 / セッコ |
研究実績の概要 |
本年度については、石膏をベースにしたモルタルを作成し、硬化までの時間の遅延性、モルタルの増粘性、軽量化のための添加剤、フィラーを検討した結果を踏まえ、硬化時間、かさ比重の差異、離水率などを比較した。その結果から、また配合材料や比率を検討した。ここで作成した各種石膏に各種の添加剤を加え、出来上がったモルタルを評価した。評価については、おもにグラウティングに用いる際の注入方法および固化後の状態評価を主眼として行った。評価、試験法については、工業試験法ではなく基本的に壁画の保存修復試験に用いられているイギリス、スイスで用いている手法を応用した(流動性、離水性、作業性、収縮率、重量、界面接着評価、強度、固化時間、剥離しやすさなど)。 その結果、工業用の二水石膏ではなく、歯科用の二水石膏とエタノール・水の混和溶液を用いることで、エジプトの古王国の壁画修復に実践的に使用し、成功裡に修復作業を進めることができた。混和材として、シラス台地のシラスマイクロバルーンを利用することで、軽量化を達成することができた。また、粒子が球形ではないために、作業性が高いことも確認した。この作業の結果、使用したモルタルは、塩類風化などの問題を引き起こすこともなかった。 なお、石膏を用いたエジプト、古王国時代の壁画研究については、JICAを通して調査した。スネフェル・イニ・イシェテフとセセムネフェルの壁画を調査対象とした。マルチスペクトル、紫外線、赤外線を用いた光学調査、蛍光エックス線を用いた材質調査と順調に進めることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実績の概要で示したように、予定していたモルタルの作成、評価を終え、実際の修復現場での使用までたどり着いたことから、おおむね順調に進捗していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
中央アジアにおいて実際には無水石膏が使用されたケースがないことが明らかになってきた。従来の報告の間違いである可能性がある。 石膏の性質の改良にさらにつとめ、より安定して使いやすい材料とすることを目指す。パーライトの混和など、体積を増量した場合の改良方法にもつとめる。また、実際に修復材料として使用したあとの評価についても、経時的に行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
予定していた出張がひとつキャンセルになったため、予算に余剰が生じた。次年度に出張を繰り越すことを予定している。
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