文献調査から、中央から西アジアにかけての地域における石膏や石灰の利用についての研究史を精査した。無水石膏を利用しているとする事例から、のちの時代に二水石膏が検出されている事例が多くみられた。トルコ、聖シメオン教会の壁画を分析調査したところ、純度の高い石膏が利用されていることを確認した。LC-MS分析、ELISA分析により、タンパク質を含む膠着材を利用したものではなく、無膠着材で彩色されたものであろうという新しい知見を得た。この地域の技術が、地中海の技法に影響を受けたものである一方で、在地の石膏を利用しているために、起こるべき炭酸塩化という過程のない彩色技法となったことを示唆する可能性がある。
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