研究課題/領域番号 |
17K01193
|
研究機関 | 総合研究大学院大学 |
研究代表者 |
石黒 直隆 総合研究大学院大学, 先導科学研究科, 客員研究員 (00109521)
|
研究分担者 |
本郷 一美 総合研究大学院大学, 先導科学研究科, 准教授 (20303919)
寺井 洋平 総合研究大学院大学, 先導科学研究科, 助教 (30432016)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | 二ホンオオカミ / ミトコンドリアDNA / ゲノム解析 / 系統解析 / ヤマイヌ / イヌ |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、日本の動物学史上、最大のミステリーとされるシーボルトコレクションの「ヤマイヌ」を、ニホンオオカミとイヌとの交雑種と位置づけて形態と遺伝子の両面から解析することである。日本各地の博物館や埋蔵文化財センターに保管されている二ホンオオカミの骨標本に関して、形態的計測とミトコンドリア(mt)DNA解析から、二ホンオオカミか?、家イヌか?それとも二ホンオオカミと家イヌとの交雑種か?について鑑別し、二ホンオオカミとヤマイヌとの関係を明らかにする。また、オランダ・ライデン市のNaturalis Biodiversity Center(NBC)の3骨資料とドイツ・ベルリン市のMuseum fur Naturkundeの3骨資料についても資料提供を受けて解析を続ける。2019年度に得られた成果内容を下記する。 1)明治時代に奈良県吉野村で捕獲された二ホンオオカミ(通称:岸田の二ホンオオカミ)に関してmtDNAゲノム解析を行った。その結果、本二ホンオオカミは、遺伝的にはグループBに属する二ホンオオカミであることを確認した。 2)長野県の縄文晩期の保地遺跡IIより出土した二ホンオオカミの骨資料2点についてmtDNA解析を行ったが、DNAの保存状況が悪くてmtDNAを増幅できなかった。 3)NBCの骨資料2点(Jentink bとJentink c)とドイツの骨資料1点(ZMB48817)については、mtDNAゲノムの解析後、核ゲノムへと解析を進めた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
国内の二ホンオオカミの資料のうち、江戸時代や明治時代など時代の新しい骨資料に関しては、おおむねmtDNAの増幅が可能であり、mtDNAゲノム解析まで研究を進めることができた。一方、縄文時代の骨資料に関しては、DNAの残存が悪くmtDNAの増幅に苦慮した。今後とも解析数を増やすことにより、古い時代の骨資料の遺伝的背景を明らかにする予定である。海外の資料に関しては、DNAの残存もよく資料提供を受けた3骨資料でmtDNAゲノム解析につづき核ゲノム解析へと研究を進めることができた。特に、NBCの骨資料のJentink cは、「ヤマイヌ」と言われていることから、その解析結果が期待される。
|
今後の研究の推進方策 |
2019年度は、本研究課題の最終年度であったが、解析予定であった紀伊半島の二ホンオオカミの骨資料や九州地区の骨資料の分析が2019年度以内に完了することができず、本研究課題を1年延長して実施することにした。2020年度の早い時期に試料採取を行う予定である。2019年までに得られたmtDNA分析結果については、現在、英語論文を投稿中である。また、シーボルトコレクションの謎となっている「ヤマイヌ」に関しても、英語論文が受理された後に、日本語にて「総説」として公表する予定である。 二ホンオオカミとヤマイヌのmtDNA分析に続き、核DNAゲノムの分析も並行しておこなっていることから、シーボルトの「ヤマイヌ」(骨資料:Jentink c)と言われた動物の遺伝的な背景がより一層明らかなものになるものと期待される。
|
次年度使用額が生じた理由 |
当初、1月~2月にかけて骨粉の試料採取にでかける予定で計画を立てていたが、先方の都合や新型コロナウイルス感染症の流行拡大により、試料採取の予定が立たず旅費等の費用が使えなくなった。2020年の早い時期に試料採取を実施する予定である。
|