1)現生鱗茎標本の採取・観察:現生の鱗茎標本を充実させるため、ツルボやノビルの採取を研究協力者とともに鹿児島県鹿児島大学農学部附属高隈演習林周辺で実施し、鱗茎形態の観察をその場で行って、記録した。その後、鱗茎部分の撮影、計測を行い、データ化を行った。また種別ごとに乾燥標本を作成して保管した。 2)遺跡出土炭化鱗茎の同定:昨年度に引き続き、縄文時代と弥生時代の遺跡から出土した土器に付着した炭化鱗茎の同定を進めた。いずれも観察可能な個体はツルボに同定され、状態が悪い個体でも他の種と積極的に評価できる個体は見られなかった。このため、ツルボは複数の土器で利用されていた点が明らかになった。土器圧痕については、特に不明鱗茎とされていた縄文時代の土器圧痕例を集成し、1)で観察された所見をもとに、外形の形態と表皮細胞の形態から種レベルの同定を行った。その結果、複数の遺跡でノビルまたはツルボないしツルボ型の土器圧痕が確認された。 またこれらの成果を論文にするため、準備を行った。 3)現生鱗茎を用いた土器炭化実験・民俗調査:韓国で予定し、渡航費用のために繰越を行って調査計画を立てていたが、COVID-19の影響で渡航不可能となったため実施できなかった。代替調査として、既存の土器での炭化実験で作成した現生炭化鱗茎試料を用いて、土器付着炭化物の安定同位体分析、脂質分析を実施した。
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