紫外線・可視光線・赤外線の光に対する反射スペクトルを非破壊測定し、これを多変量解析することによって顔料および染料を同定しようとした。 研究初年度の2017年度は、広波長域の光に対する色材の反射スペクトルを非破壊測定するために、紫外線・可視光線・赤外線を発光する光源1台、紫外線・可視光線用と赤外線用の分光検出器2台、三分岐光ファイバー1本のデバイスから構成される装置を構築した。反射スペクトルのデータを取得し解析するために、USBケーブルで分光検出器をコンピュータへ接続した。 2018年度は、多変量解析に供する反射スペクトルの標準データを得るために、本装置を用いて精度・確度・再現性良く色材を測定できる条件を検討した。治具を用いて光ファイバー先端部を固定し、測定点に対して光を正確に照射し受光する方法を検討した。しかし、当初予定していた方法では、非破壊ではあるが色材面に対する治具の接触は避けられない。この課題を解決するために、非破壊かつ非接触で反射スペクトルを測定するための方法を探索した。 2019年度は、標準色材試料の反射スペクトルを測定し、多変量解析に供するデータを蓄積した。データの蓄積量が多変量解析による色材同定の性能に関係する。反射スペクトルの多変量解析による色材同定に一定の目途が立ったが、データ量は未だ十分ではないため引き続きデータの蓄積に取り組む。更には色材同定のための最適な多変量解析法を見出す。 以上のほか、反射スペクトルおよび他の色材データを得るための非破壊・非接触測定法も探索した。各種フィルターを用いるなどして非破壊・非接触撮影したデジタル画像から、反射スペクトル・反射率・蛍光波長・色相を推定するための方法を見出した。このように本研究は、反射スペクトルの多変量解析による色材の非破壊・非接触同定法の開発に着手し、その開発の可能性を見出した。
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