研究課題/領域番号 |
17K01203
|
研究機関 | 東京都立産業技術高等専門学校 |
研究代表者 |
栗田 勝実 東京都立産業技術高等専門学校, ものづくり工学科, 教授 (90282871)
|
研究分担者 |
青木 繁 東京都立産業技術高等専門学校, ものづくり工学科, 教授 (20106610)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | 固有周期 / 減衰定数 / 展示台 / 転倒限界加速度 / ロッキング |
研究実績の概要 |
簡易な方法による文化財用免震装置の揺れの許容判定指標の構築に関係する3点について研究を実施した。 1.文化財が展示される場所の振動特性の把握:文化財が展示される主たる場所は建物内部であることが多いことから、2001~2005年の日本建築学会学術講演梗概集で公表されている振動データを基に、建物高さと固有周期、減衰定数の回帰式を作成した。また、既存の関係式と比較・検討し、妥当性を示した。 2.市販されている博物館用展示台の振動特性:博物館などで展示される作品の多数は展示台に設置されることから、市販されている展示台を対象に振動実験から振動特性を推定し、それが展示されている作品の転倒に与える影響について検討した。展示台を床等に固定した条件で加振した場合、入力と応答の波形性状は、ほぼ同一性状を示す。一方、展示台を固定しない条件で加振した場合、展示台はロッキング振動を励起し、入力波の振幅が大きい部分にて展示台が転倒に至ることを確認した。これらの結果から、展示台を床などに固定する場合にはテグスなどを用いて作品を展示台に固定する、また固定しない場合には下部に小型免震装置を設置するなどしてロッキング振動を励起させないなどの工夫が必要であることを示した。 3.振動実験による展示物モデルの転倒限界加速度の推定:地震による揺れにより建物内部で展示されている作品は転倒・破損に至ることから、転倒条件について振動実験を基に検討した。その結果、加振振動数が3Hz以下の条件では静的転倒加速度を用いて転倒を判断することができる。また、加振振動数が3Hzよりも大きい条件では、静的転倒加速度を超えるとロッキング振動を励起することが確認できた。さらに、数値解析用のプログラムを作成し、振動実験結果との比較検証をした結果、プログラムおよび数値モデルの妥当性が確認された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画では、1.文化財が展示される場所の振動特性の把握、2.振動実験による展示物モデルの転倒限界加速度の推定、3.建物内部で展示会場を模した場所での地震観測 以上の3点の実施を挙げた。 実際、1.に関しては、①建物高さと固有周期、減衰定数の関係、②市販されている博物館用展示台の振動特性 の成果を得ている。2.に関しては、展示物モデルを用いた振動実験を実施し、転倒条件について振動実験を基に検討したと共に、H30年度の研究計画に掲げている数値解析の下準備まで進んでいる。3.に関しては、本校施設内の建物1Fと7Fで地震観測を開始し、データ得られ始めている。 以上のことからおおむね順調に進んでいると判断した。
|
今後の研究の推進方策 |
H29年度の研究結果を基に、H31年度に掲げた研究計画へスムーズに接続できるよう以下3点について実施する 1.数値解析による展示物モデルの検証と評価:振動実験による展示物モデルの転倒限界加速度の推定から得られた結果を、数値解析により検証する。 2.文化財が展示される場所の振動特性の把握:サンプル数を増やすため、平成29年度に引き続き文化財が展示される場所の振動特性を把握に関する作業を進める。 3.建物内部で展示会場を模した場所での地震観測:観測を継続し、データの蓄積を進める。
|
次年度使用額が生じた理由 |
安定した振動実験の結果を得ることを目的として、研究計画段階では展示台および展示物モデルのサイズを小・中・大の3段階に設定し、結果を見ながら変更して実験を遂行する予定であった。しかし、予備的な振動試験の結果から ①小型モデルでも十分に安定した結果が得られる事を確認した ②実験における安全性確保の観点から、現在の施設で寸法を大きくしたモデルを使用した実験は好ましくない。以上の2点から計画していた使用額より少なくなり次年度使用額が生じた。 スケール則の観点から、少なくとも違うサイズのモデルを作成し実験する。実験時の安全性確保のための装置を作成する。以上2点を実施するために実験用材料費に充当する。また、余剰が出た場合には学会発表のための旅費および論文投稿料に充当する。
|