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2019 年度 実施状況報告書

Sr同位体比分析による日本出土「ナトロンガラス」の産地に関する考古科学的研究

研究課題

研究課題/領域番号 17K01207
研究機関独立行政法人国立文化財機構奈良文化財研究所

研究代表者

田村 朋美  独立行政法人国立文化財機構奈良文化財研究所, 都城発掘調査部, 研究員 (10570129)

研究期間 (年度) 2017-04-01 – 2021-03-31
キーワードナトロンガラス / Sr同位体比 / 鉛同位体比 / 産地
研究実績の概要

本研究は、日本出土のガラス製遺物のSr同位体比分析を実施し、これまで特定することのできなかった生産地の特定を目指すものである。
平成31年度は、飛鳥寺塔心礎出土のガラス小玉のSr同位体比を測定した。飛鳥寺塔心礎出土のガラス小玉は化学組成の特徴からメソポタミア地域で生産された可能性が高いと推定される植物灰ガラスである。今回、本資料のSr同位体比を分析した結果、これまで調査したガラス資料の中で最も低いSr同位体比を示した(87Sr/86Sr:0.708346)。このような低いSr同位体比はシリア内陸部のラッカ(ユーフラテス川中流域)で出土しているガラスと共通することが分かった。
さらに、本年度は鉛同位体比分析から着色剤のコバルト原料産地についての検討をおこなった。地中海世界で生産されたと推定しているナトロンガラス(GroupSI)に使用されたコバルト原料は、MnOが少なく、少量のPbOとCuOを含有するタイプである。このような着色剤の特徴は西アジアもしくは中央アジア産と推定している植物灰ガラス(Group SIIIB)にも共通する。鉛同位体比測定の結果、このようなMnO含有量の少ないコバルト原料で着色されたGroupSIおよびGroupSIIIBの鉛同位体比は、互いに類似した鉛同位体比を示し、既発表の鉱石データではイラン、パキスタン、オマーン等に類似の値を示すものが存在することがわかった。このことは、基礎ガラスの生産地との関係からも整合的に理解できる。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本年度に予定していた鉛同位体比からナトロンガラスの着色剤の産地について検討することができた。さらに、比較対象として同じ「西方世界のガラス」である植物灰ガラスのSr同位体比を測定することができた。その結果、日本出土のナトロンガラスは東地中海沿岸部で出土するガラスと共通のSr同位体比を持つのに対し、飛鳥寺塔心礎から出土した植物灰ガラスのSr同位体比は、シリア内陸部のラッカ(ユーフラテス川中流域)で出土しているガラスと共通することを示すことができたことなど、当初の予定通りの進捗と成果が得られている。
一方で学会誌に投稿することで、成果を発信することとしていたが、研究成果を投稿中の学術雑誌の刊行が令和2年度になったため、成果の公表についてはやや遅れている。

今後の研究の推進方策

研究成果を学術雑誌に投稿し、成果を公表する。

次年度使用額が生じた理由

当初、学会誌に投稿することで、成果を発信することとしていたが、研究成果を投稿中の学術雑誌の刊行が令和2年度に遅れたため、次年度使用額が生じた。当該学会誌は次年度の早い時期に刊行されるとの連絡を受けており、次年度繰り越し分は学会誌の投稿料として使用する予定である。

  • 研究成果

    (12件)

すべて 2020 2019

すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (7件) (うち国際学会 5件、 招待講演 2件) 図書 (2件)

  • [雑誌論文] 擦文末期~アイヌ文化期初期におけるガラス玉の起源と流入経路2020

    • 著者名/発表者名
      田村朋美・髙橋美鈴
    • 雑誌名

      北海道考古学

      巻: 56 ページ: 1-20

    • 査読あり
  • [雑誌論文] 宮ノ前遺跡出土の和同開珎百文緡の調査2019

    • 著者名/発表者名
      振角卓哉・田村朋美
    • 雑誌名

      出土銭貨

      巻: 40 ページ: 67-80

  • [雑誌論文] 京都府馬場南遺跡出土管状ガラス製遺物の鉛同位体比分析2019

    • 著者名/発表者名
      田村朋美
    • 雑誌名

      奈良文化財研究所紀要

      巻: 2019 ページ: 58-58

  • [学会発表] ポータブルXRFによる丹後地域における碧玉製管玉の産地分析2019

    • 著者名/発表者名
      藁科哲男・田村朋美・中村大介
    • 学会等名
      日本文化財科学会第36回大会
  • [学会発表] 古代末~中世における境界領域のガラス玉-北海道および鹿児島県喜界島出土ガラス玉の産地と鉛同位体比分析-2019

    • 著者名/発表者名
      田村朋美・髙橋美鈴
    • 学会等名
      日本文化財科学会第36回大会
  • [学会発表] Distribution of products and transfer of bead-making technology of potash glass2019

    • 著者名/発表者名
      田村朋美・大賀克彦
    • 学会等名
      The 3rd SEAMEO SPAFA International Conference on Southeast Asian Archaeology
    • 国際学会
  • [学会発表] モンゴル匈奴墓出土ガラス玉類の考古科学的研究2019

    • 著者名/発表者名
      田村朋美・中村大介・Odokhuu Angaragsuren・Bayarsaikhan Jamsranjav・Jean-Luc Houle
    • 学会等名
      2019東アジア文化遺産保存国際シンポジウムin大田
    • 国際学会
  • [学会発表] 未定C群製管玉からみた朝鮮半島と日本列島2019

    • 著者名/発表者名
      田村朋美・藁科哲男・中村大介・大賀克彦・金奎虎
    • 学会等名
      2019東アジア文化遺産保存国際シンポジウムin大田
    • 国際学会
  • [学会発表] Ancient glass beads excavated in Japan and along the Silk Road2019

    • 著者名/発表者名
      田村朋美
    • 学会等名
      Silk Roads: Archaeology, Museums and Heritage science, University of Nottingham, Ningbo, China
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] 日本出土ガラス玉類の起源と交易ルート2019

    • 著者名/発表者名
      田村朋美
    • 学会等名
      International Symposium of 'Wold of Ancient Glass'
    • 国際学会 / 招待講演
  • [図書] ビーズでだどるホモ・サピエンス史ー美の起源に迫る2020

    • 著者名/発表者名
      池谷和信・門脇誠二・河村好光・山本直人・木下尚子・田村朋美・遠藤仁・谷澤亜里・山花京子・末森薫・戸田美佳子・大塚和義・印東道子・後藤明・中村香子・野林厚志・齋藤玲子・中村真理絵
    • 総ページ数
      297
    • 出版者
      昭和堂
    • ISBN
      978-4-8122-1927-0
  • [図書] The Ancient East-West Corridor of Mainland Southeast Asia2019

    • 著者名/発表者名
      ITO Toshikatsu, MARUI Masako, NITTA Eiji, SATO Yuni, San Shwe, San Win, SHIBAYAMA Mamoru, Soe Thainkha, SUGIYAMA Hiroshi, TAMURA Tomomi, TASHIRO Akiko
    • 総ページ数
      304
    • 出版者
      Geoinformatics International
    • ISBN
      978-616-90698-4-3

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公開日: 2021-01-27  

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