本研究は日本列島における先史時代人はどのようにビジュアライズされるのかを明らかにするために、①先史時代の復元イメージの収集・データベース作成を文献調査とフィールド調査によっておこない、復元イメージの変遷・多様性を把握し、②1)新たな考古学的発見、2)考古学の研究動向、3)先行する先史時代人像、4)人々の先史時代への見方、これら4要素と先史時代人イメージの関係分析を行なっている。 2020年度は①のフィールド調査として、北海道・東北・信越・関西・東海地方の博物館展示における先史時代復元イメージの事例を収集し、復元イメージの変遷・多様性の把握を進めた。②では、1)新たな考古学的発見、2)考古学の研究動向、4)人々の先史時代への見方、三要素の関係分析を遺跡公園内における復元実践の分析に応用した成果を国際学会(オンライン)にて発表した(1件)。 前年度から、先史時代人のビジュアライゼイションの基盤を、「先史時代イメージ」を復元画にとどまらない抽象的なイメージも含んだ表象と捉えて分析する方向性を追加した。その視点を生かして先史時代および先史考古学実践に触発された美術展カタログについての書評を発表した(1件)。また、1)新たな考古学的発見が行われる場としての発掘調査現場を主導しながら同時にそのプロセスを分析する民族誌的研究の成果(1件)においても、この視点は生かされることになった。総じて、本研究は先史時代人のビジュアライゼイションの事例を収集し分析するという当初の構想を超えた展開をみせ、発展的な研究構想をまとめることができた。
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