研究課題/領域番号 |
17K01221
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研究機関 | 独立行政法人国立文化財機構奈良文化財研究所 |
研究代表者 |
西田 紀子 独立行政法人国立文化財機構奈良文化財研究所, 飛鳥資料館, 研究員 (80359447)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 歴史的建造物 / 町並み / 地籍図 / 古写真 / 展示 / 住民参加 |
研究実績の概要 |
①各大字における歴史的建造物の残存状況について、奥山・飛鳥・島庄・冬野・畑などの大字を踏査した。調査は住宅、宗教建築、店舗などすべての建造物を対象とし、外観から推定できる建築年代および構造形式などを記録した。調査にあたっては、明日香村教育委員会および各大字の総代の協力を得た。また、各大字の土地利用の変遷を示す資料の一つである明治頃の地籍図(明日香村および岡所蔵)を調査した。 ②展示及びイベントの開催 飛鳥資料館において、明治期から昭和中期までの町並みや景観の変遷に注目した特別展「あすかの原風景」(会期2018年4月27日~7月1日)を開催するための準備を進めた。また、展示期間中に実施を予定している、古図や古写真をみながら村内を巡るイベントにむけて、基礎資料の収集や地元との調整も進めた。 さらに、特別展の展示準備のため、地図や写真をテーマとした展示を視察し、担当者から展示にあたっての工夫などを聞き取りなどの展示手法の調査をおこなった。またデジタル機器をもちいた、地図や写真展の展示手法についても調査した。 ③地域住民や入江泰吉記念奈良市写真美術館など関係機関・各氏にも協力を仰ぎ、明日香村の古写真の収集をおこなった。また明日香村文化協会の関係者の協力のもと、地域景観の変遷に関わる聞取り調査もおこなった。 ④ほかの地域における歴史的建造物に関わる諸制度の運用実態を調べた。富山県高岡市で開催された登録有形文化財建造物修理関係者等講習会に参加して、高岡市をはじめとする各自治体及び建築関係者による歴史的建造物の保存活用の実態について調査した。また住民参加型の地域振興にむけたNPOやボランティア団体などの各組織の運用実態についての聞き取りもおこなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度は明日香村の関係者との協力関係を築きつつ、調査を進展させた。奥山・飛鳥・島庄・冬野・畑などの大字を踏査して、外観から推定できる建築年代および構造形式などを記録し、築50年以上を経過した建造物の残存状況を把握できた。 また、各大字の土地利用の変遷を示す資料の一つである明治頃の地籍図(明日香村および岡大字所蔵)を調査した。これらの明治期の地籍図・昭和の古写真を調査したことで、近現代の集落の宅地地域の推移の概要があきらかになりつつある。これらの資料を、現存する歴史的建造物と比較することで、町並みの変遷をわかりやすく一般にも説明できることが可能となった。 調査成果については、2018年度飛鳥資料館春期特別展「あすかの原風景」で公開し、本研究の情報を地元と共有することをめざした。展示準備にあたっては、村の住民課や、岡大字の関係者と連携し、調査成果を地域と共有することで、当該地域の歴史的建造物や地籍図に対する興味関心を高めるようにした。 また、この研究を開始したことで、取り壊される民家や、日常空家となっている民家の情報が地元から寄せられた。取り壊し寸前の民家については、緊急調査して記録保存することができた。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度から継続中の、各大字の歴史的建造物の残存状況の調査を進展させる。 また明日香村の近現代の変遷に注目した、村内をめぐるイベントを実施する。
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次年度使用額が生じた理由 |
前年度調査成果のとりまとめを継続実施し、執行する。
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