近年発生した地震において発生した液状化発生域の土地条件、土地履歴について、さまざまな地理空間情報を用いたGIS解析やSfM(Structure from Motion)解析、おもに江戸期の史料、絵図などの分析などを行い、検討した。2011年東北地方太平洋沖地震における鬼怒川・小貝川低地の液状化域は既存研究では後背湿地や自然堤防など自然地形における液状化発生とみなされていたが、それらの中には1970年代以降の砂利採取・埋め戻し履歴を有する地点が多く存在していたことを見出した。このことから、それらの液状化域では砂利採取場埋め戻し土が液状化したと考えられる。2016年熊本地震においては、白川から緑川にかけて細長い帯状の液状化発生域(液状化の帯)が出現した。この「液状化の帯」にはかつて白川が川尻方面へと流下し、江戸期には小規模な旧河道もしくは水路が存在していたことが古文書の記述内容や絵図から示唆された。明治期の旧版地形図には「液状化の帯」における河川の存在は認められない。このことから、「液状化の帯」の出現には明治期以前の河川または水路の埋め戻しなどの土地改変が影響していることが示唆された。2018年北海道胆振東部地震における札幌市清田区の液状化や地盤変状発生地点を詳細な現地踏査により明らかにした。SfM(Structure from Motion)解析や多時期の地理空間情報を用いたGIS解析から、それらの地点のほとんどは1960年代以降に造成された谷埋め盛土に位置していることが認められた。これらのことから、近年の地震における液状化被害は旧河道(水路)の埋め立て、砂利採取場の埋め戻し、1960年代高度成長期以降に造成された谷埋め盛土などの人為的土地改変が強く影響していることが明らかとなった。
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