2018年3月に公示され、2022年から実施される次期高等学校学習指導要領では、「目標」と「内容」に地理情報システム(GIS)の利用を掲げた新科目「地理総合」が必履修科目とされた。本研究では、地理総合で利用できる地理教育用WebGISを開発することである。その準備として、本年度は高等学校におけるGIS利用の現状と課題を明らかにするために、アンケート調査を実施した。全国の高等学校の約4割にあたる1331校を無作為に抽出して調査票を郵送し、そのうち476校(35.8%)から回答を得た。調査の結果明らかになった点をまとめると次のようになる。 まず、高校でのGIS利用率は23.9%だった。GISを利用している教員は、地理を専門とし、大学でGISを実習形式で学ぶか、GIS研修の経験者で、情報機器の整備された学校に勤務していた。GIS利用者は無償のGISソフトやサービスを利用し、WebGISへの期待が大きい。GIS利用の課題として情報機器の整備が第一に挙げられ、普通教室での投影機器とインターネット接続の普及が急務であり、この問題が解消されない限り、GIS利用の拡大は困難である。その上で教員へのGIS技術の普及が必要である。現職教員へのGIS研修に際しては、教員の意欲や技術を考慮し、WebGISの閲覧・操作を中心とした簡便な内容が求められる。 調査の結果から、「地理総合」ではWebGISの利用が中心となると予想される。WebGISで表示できるデータの整備と、高校でのネット接続環境の悪さから、インターネットに接続しなくともWebブラウザのみで表示できるGISの開発が求められているといえる。本年度の後半では、代表者の開発しているフリーGISソフトMANDARA10からWeb出力できる機能の追加を行っている段階である。
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