研究課題/領域番号 |
17K01228
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
池見 洋明 九州大学, 工学研究院, 助教 (90380576)
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研究分担者 |
三谷 泰浩 九州大学, 工学研究院, 教授 (20301343)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 九州北部豪雨災害 / ベリリウム同位体 / プロセスモデル / 地形解析 |
研究実績の概要 |
【 情報収集と解析用データベースの構築】 調査地域を九州北部豪雨により災害が発生した福岡県朝倉市周辺に変更して、必要な情報を収集し、データベースを構築した。国内で入手可能な情報として、航空機レーザ測量データ(入手先:自治体)、1960 年頃以降の時系列の空中写真(国土地理院)や大縮尺地形図(自治体)、ランドサット画像などの近赤外線を含む衛星画像、地質ボーリングなどである。また、収集した航空機レーザ測量データをもとに申請者らが提案する手法[7] により高精度デジタル標高モデル(DEM) を作成した。その他、有用なデータを収集し、地形解析用のデータベースを構築した。 【 地形プロセスベースの数値モデルを用いた地形解析とモデル流域の選定】 データベースをもとに調査流域全域で数値モデルによる地形解析を行い、流域の地形的特徴を示す地形勾配と流域面積の分布図や地形量を求めて、モデル流域として多様な斜面をもつサブ流域(渓流域)を複数選定した。申請者らが提案する数値モデルとは、地形を形成するプロセスが地殻運動、斜面変動、河川作用から構成されるとし、それぞれの現象で発生する土砂フラックスの質量は保存されるとして表現したモデルである。このモデルから、対象とする流域がこれまでどのような地形プロセスを経験したかを解析できる。この式(1) を用いた解析手順の概要は、まず比較的広域で地質ごとに区分した流域のDEM から勾配曲率比と流域面積 を軸とした両対数の散布図を描き、モデル式 を用いた回帰分析からサブ流域の特徴である地形量 値を算出する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
九州北部豪雨災害が発生したため調査地の変更を行ったが,【 情報収集と解析用データベースの構築】および【 地形プロセスベースの数値モデルを用いた地形解析とモデル流域の選定】は予定通り完了した.
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今後の研究の推進方策 |
【地形・水文調査と流量解析による斜面の土砂分布の把握】 モデル流域において、定期的な流量観測と水位の連続観測、河川水の定期的なシリカ分析、分布型水文モデルによる水文解析および地形解析を行って、モデル流域の地下水や斜面の土砂分布を定量的に把握する。一般に、河川の流量や化学組成(特にシリカ濃度)は、流域に分布する土砂量や地下水に影響を受ける。また、これまでの研究から、地形量値は、渓流域のハイドログラフ、比流量、シリカ濃度と関係があることがわかっている。これらの関係をもとに、各モデル流域において、水文・地形の現地調査、分布型水文モデルによる水文解析、数値モデルによる地形解析を行い、サブ流域の斜面に分布する土砂量や地下水の動きを定量的に把握する。 【宇宙線生成核種10Be を用いた時空的な土砂の移動メカニズムの解明】 斜面物質および河床堆積物のサンプリング、前処理およびベリリウム同位体を測定し、流域ごとの土砂生産量の違い、河床堆積物の起源、土砂の移動が、崩壊によるのか、重力によるクリープなのかなど、その移動履歴を時・空間的に明らかにする。ベリリウム同位体10Be は、半減期138 万年の放射性同位体,β崩壊によってホウ素10B となって安定する.この10Be は宇宙線の影響により岩石表面や表層土に生成され、10Be 量の変化から岩石の侵食率などを推定することができる(兼岡, 年代測定概論,1998)。河床堆積物の10Be 含有量は、上流域から供給される土砂の値となる。斜面崩壊により土砂が供給された場合は、地下深部の土砂が混入する割合が大きくなり、結果として、堆積物の10Be 含有量は小さくなる。この関係から、流域の斜面や河床堆積物の10Be 含有量を分析し、河床堆積物の起源や時間的な移動履歴が解明できる。
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