研究課題/領域番号 |
17K01228
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
池見 洋明 九州大学, 工学研究院, 助教 (90380576)
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研究分担者 |
三谷 泰浩 九州大学, 工学研究院, 教授 (20301343)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 九州北部豪雨 / ベリリウム同位体 / プロセスモデル / 地形解析 |
研究実績の概要 |
【地形・水文調査と流量解析による斜面の土砂分布の把握】 モデル流域において、定期的な流量観測と水位の連続観測、河川水の定期的なシリカ分析、分布型水文モデルによる水文解析および地形解析を行って、モデル流 域の地下水や斜面の土砂分布を定量的に把握する。一般に、河川の流量や化学組成(特にシリカ濃度)は、流域に分布する土砂量や地下水に影響を受ける。ま た、これまでの研究から、地形量値は、渓流域のハイドログラフ、比流量、シリカ濃度と関係があることがわかっている。 これらの関係をもとに、モデル流域 において、水文・地形の現地調査、分布型水文モデルによる水文解析、数値モデルによる地形解析を行い、サブ流域の斜面に分布する土砂量や地下水の動きを定量的に把握する試みを行った。2018年度は、福岡県筑後川水系赤石川支流の乙石川流域において、地形解析、支流の流量およびシリカ計測を実施した。 乙石川流域はおよそ6km2の面積で、九州北部豪雨災害により多量の土砂が流下したエリアである。また河道に沿って横ずれ断層露頭が分布し、その断層を境界に流域の東西の地形の違いが空中写真で確認できる。東側の流域は西側に比べて、直線谷が多く分布し、尾根と谷地形は明瞭に確認できる。 結果として、地形解析から、尾根地の曲率が東西で異なることがわかった。渇水期に計測した比流量および溶存シリカ濃度からは、流域の西側からの支流の値は同様な値を示したのに比べ、東側支流の値は大きくばらつく結果を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
九州北部豪雨災害が発生したため調査地の変更を行ったが,【地形・水文調査と流量解析による斜面の土砂分布の把握】は予定通り完了した.
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今後の研究の推進方策 |
【宇宙線生成核種10Be を用いた時空的な土砂の移動メカニズムの解明】 斜面物質および河床堆積物のサンプリング、前処理およびベリリウム同位体を測定し、流域ごとの土砂生産量の違い、河床堆積物の起源、土砂の移動が、崩壊に よるのか、重力によるクリープなのかなど、その移動履歴を時・空間的に明らかにする。ベリリウム同位体10Be は、半減期138 万年の放射性同位体,β崩壊に よってホウ素10B となって安定する.この10Be は宇宙線の影響により岩石表面や表層土に生成され、10Be 量の変化から岩石の侵食率などを推定することができ る(兼岡, 年代測定概論,1998)。河床堆積物の10Be 含有量は、上流域から供給される土砂の値となる。斜面崩壊により土砂が供給された場合は、地下深部の土 砂が混入する割合が大きくなり、結果として、堆積物の10Be 含有量は小さくなる。この関係から、流域の斜面や河床堆積物の10Be 含有量を分析し、河床堆積物 の起源や時間的な移動履歴が解明できる。
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