研究課題/領域番号 |
17K01230
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研究機関 | 首都大学東京 |
研究代表者 |
菊地 俊夫 首都大学東京, 都市環境科学研究科, 教授 (50169827)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | フードツーリズム / 大都市近郊 / 大都市近郊外縁部 / 大都市遠郊 / 農空間 / 農業空間 / 農村空間 / 空間構造 |
研究実績の概要 |
本研究は、フードツーリズムのフレームワークを用いて農村再生システムを把握することを主目的にしている。既存研究におけるフードツーリズムの整理から、フードツーリズムの類型化と地域的差異を把握し、それらに基づいて事例地域を都市近郊と都市近郊外縁部、および都市遠郊から抽出した。具体的には、都市近郊の事例として東京都小平市を、都市近郊外縁部の事例として山梨県甲州市勝沼地区を、都市遠郊の事例として長野県安曇野市を抽出した。それぞれの農村地域において、農林業センサスの集落カードを用いて、都市的要素の直接的影響と間接的影響、都市からの地理的位置、および混住化と人口の流出・流入の質的程度、農牧業の実態に関する統計分析を行った。その結果、都市近郊から都市遠郊にかけて、「食」や「農」資源のポテンシャルは高くなるが、その担い手のポテンシャルは低くなる。このことから、都市近郊では「食」や「農」のポテンシャルを高めるフードツーリズムの空間構造が、都市遠郊では「食」と「農」のポテンシャルを生かすために、担い手のポテンシャルを高めるフードツーリズムの空間構造が必要になることが、本研究の仮説として明らかになった。そのような仮説を実証するために、いくつかの地域で事例研究を行った。具体的には、大都市近郊の小平市では、農業体験農園や農産物直売所の有意性を生かすことで、「農」空間や「農業空間」が保全され、農村空間が都市空間と共生することで、農村再編が進められてきた。このことは、「食」と「農」のポテンシャルを高めるためのフードツーリズムの効用の証左となる。このような事例研究を大都市近郊の小平市だけでなく、大都市近郊外縁部の甲府盆地や大都市遠郊のバンクーバー島のワインツーリズムの調査に基づいて行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初予定していた事例地域の調査は、対象地域の変更や見直しがあったが、順調に進んでいる。初年度におけるフードツーリズムの事例調査地として、パリ大都市圏を予定していたが、スローフードとの関連性を盛り込むため、カナダ・バンクーバー島のワインツーリズムの調査に変更した。また、シドニー大都市圏における調査は、フードツーリズムのシーズンが5月になるため、次年度に調査を行うようにした。
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今後の研究の推進方策 |
国内外の事例地域の研究をさらに進める。事例地域の調査では、フードツーリズムの重層的な空間構造を明らかにするため、土地利用調査や土地条件調査、および聞き取り調査をより詳細に行う。また、事例地域のデータを蓄積し、地域比較を可能にするため、現地調査や実証的な研究は、同じ項目や同じ研究フレームワークに基づいて行うように努める。
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次年度使用額が生じた理由 |
海外における事例調査地において、特に南半球の調査地においてのフードツーリズムのシーズンが晩秋であり、それが日本における4月から5月に相当する。そのため、南半球(オーストラリア)のフードツーリズムの調査を次年度の5月頃に予定したため、予算の次年度使用額が生じた。
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