研究課題/領域番号 |
17K01230
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研究機関 | 東京都立大学 |
研究代表者 |
菊地 俊夫 東京都立大学, 都市環境科学研究科, 客員教授 (50169827)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | フードツーリズム / ビールツーリズム / ワインツーリズム / 農村活性化 / 重層構造 / 連坦構造 / 「農」資源 / コラボレーション |
研究実績の概要 |
今年度は新型コロナウイルス感染症の影響で予定された海外出張や国際会議に出席することでの成果発表ができなかった。しかし、国際地理学会の持続的農村システム会議がオンラインで開催され、カナダのブリティッシュコロンビア州における有機農産物の生産流通に関連したフードツーリズムと地域活性化の仕組みを整理して発表した。加えて、東京大都市圏における都市農業の農産物直売所と関連したフードツーリズムと農村振興の在り方を明らかにした研究も整理し、持続的農村システム会議で発表した。また、海外における調査ができなかったため、国内のビールツーリズムやワインツーリズムなどのフードツーリズムと農村振興の関連を明らかにする調査を進めた。具体的には、沖縄県や静岡県におけるビールツーリズムの調査では、単にクラフトビールが1つのブリュワリーで醸造されるという現象にとどまらず、クラフトビールの醸造に果物や黒糖、あるいはワサビなどの地域の農産物が用いられるようになり、醸造所とともに周辺農村が活性化するようになっていた。このような仕組みは、フードツーリズムのフレームワークが地域資源を総合的に、かつ重層的に活用していることの検証となった。以上に述べたような検証はビールツーリズムだけでなく、ワインツーリズムや農産物直売所に関連したツーリズム、あるいは「農」空間を活用したフットパスでも行うことができるため、それらの現象に関するデータ整理と研究としてのまとめを行った。その成果は、オーストラリアのパース都市圏におけるワインツーリズムとビールツーリズムの共生に関する研究としてまられ、オンラインで開催された日本地理学会で発表した。ウィズコロナの時代における研究として、国内の調査を中心にデータを収集し、海外のデータはインターネットなどで得られるデータを中心に分析を進めたが、海外の地域データが不足している事実は否めなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
これまでの調査に基づいて、フードツーリズムのフレームワークを用いた農村再生システムを取りまとめ、国内外の会議で成果発表し、さまざまな研究者と議論して研究の精緻化を図る予定であった。しかし、新型コロナウイルス感染症の影響で、国内外のすべての会議がオンラインとなったため、研究成果の発表はできたが、それに基づく議論が十分にできなかったことは研究の進捗に少なからず影響を及ぼしている。また、フードツーリズムのフレームワークを用いた農村再生の補足調査のフィールドワークを国内外で実施する予定であった。しかし、多くの地域で、特に海外のフィールドでは、フィールドワークが滞り、研究の進捗状況に大きな影響を与えた。一方で、既存の資料や統計の分析、および文献の検討などの作業はかなり進み、そのような室内作業は研究成果の理論的枠組みの構築に大いに役立った。その意味で、フィールドワークの進捗は遅れているが、フードツーリズムのフレームワークの意味や地域的な役割、そしてフードツーリズムにける地域の重層構造や連坦構造をじっくりと考察できたことは幸いであった。
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今後の研究の推進方策 |
フードツーリズムのフレームワークを用いた農村再生の仕方、あるいは農村再生のシステムに関連して、ひとつの農村でみられる地域資源活用の重層構造と、いくつかの農村がひとまとまりとなって再生を推進させる連坦構造を取りまとめとして精緻化する。また、フードツーリズムのフレームワークを用いた農村再生システムを国内外の会議で研究成果として報告し、多くの議論を経た後に国際誌に投稿する。本年度の成果から、フードツーリズムの重層構造と連坦構造がひとつのセットとなって農村再生に寄与してきた欧米諸国と、重層構造の発達はみられるが、連坦構造が未発達な日本との比較研究を行い、そのような地域的差異の要因を探るとともに、フードツーリズムのフレームワークを用いた農村再生の一般化を試みる。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度は新型コロナウイルスの感染症の影響で、国内外の会議での研究成果の発表がオンラインとなり、現地に出張することがなかった。それに加えて、補足調査としてのフィールドワークができなかったことなどが、未使用額の次年度使用が生じた大きな理由となった。研究者自身と官公庁や農業団体、農家などの被調 者のいずれの安全のためにもやむをえない状況であった。また、参加 発表を予定していた学会の学術大会や研究会のすべてがオンラインとなり、研究の討論や議論のための出張もできなかった。そのため旅費の多くが未使用となった。以上のことを踏まえて、次年度の研究費の多くは国内外での研究成果発表のための旅費や補足調査の旅費に使用する予定である。
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