今年度は研究のまとめと補足調査を行った。これまでの研究においてフードツーリズムが当該地域のさまざまな環境資源を活用して成立発展し、郷土食などのスローフードから美食などのグルメフードまでの重層構造をもつことが明らかにされた。しかし、フードツーリズムそのものの成立発展だけでなく、フードツーリズムの波及効果として農村振興や農村再生にどのように結びつくかも重要になる。そのため、本年度の研究は従来の外国調査の資料の見直しや、国内の事例地域の補足調査によってフードツーリズムと農村振興や農村再生との関連を再検討した。その結果、以下のことが明らかになった。フードツーリズムによって農村振興や農産再生が生じるためには、フードツーリズムそのものの成立発展だけでは農村振興や農村再生を持続できないことがわかった。つまり、フードツーリズムは一過性の観光現象であり、持続的な発展や新興を確実にする仕掛けが必要になる。そのような仕掛けとして多くの地域で見られたのは、フードツーリズムと他の資源や他の観光ツーリズムとのコラボレーションである。例えば、フードツーリズムとジオツーリズムとの結びつきにより、ツーリズムの資源を増やすとともにそれらの組み合わせを多くすることで、観光アトラクションが多様化する。観光アトラクションの多様化は観光客のニーズの多様化にも対応し、多くのリピーターも生みだすことになる。こうした螺旋的な波及効果がフードツーリズムによる持続的な農村振興や農村再生につながる。同様に、ワインツーリズムやビールツーリズムもそれらだけでは持続的な農村振興や農村再生につながらない。それらのツーリズムと農産物直売所や乳製品加工場などのさまざまな農村資源と結びつき、フードツーリズムコンプレックスを形成することで持続的な農村振興や農村再生が達成される。以上に述べてきたことを踏まえて、総合的なモデルの構築が行われた。
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