研究課題/領域番号 |
17K01232
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研究機関 | 帝京平成大学 |
研究代表者 |
佐藤 剛 帝京平成大学, 現代ライフ学部, 教授 (00468406)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 崩壊 / MEMS孔内傾斜計 / 降下火山灰 / レス / クリープ / 堆積相 |
研究実績の概要 |
平成24年九州北部豪雨による土砂災害や平成25年台風16号の豪雨による伊豆大島の土砂災害など,火山体周辺で発生する土砂災害が頻発している.これらの災害の原因となった崩壊に共通して言えるのは,降下火山灰とレス(風成塵起源の堆積物)が互層する斜面物質が崩壊に関与していることである.本研究は,Micro Electro Mechanical System(MEMS)加速度センサを搭載した孔内傾斜計(以後,MEMS孔内傾斜計)を用いて,火山灰被覆斜面のクリープと崩壊の動きを検出することともに,地形・地質調査結果および地盤調査結果そして間隙水圧計による観測結果を組み合わせることで,火山灰被覆斜面の崩壊発生機構を説明することを目的としている.調査地は熊本県阿蘇市,中岳の北東斜面に位置する. (孔内傾斜計の設置と観測) 調査地において2017年11月5日に孔内傾斜計と間隙水圧計を設置し観測を開始した.孔内傾斜計のデータは,15 cm毎に深度180 cmまで得られている.観測開始以降,それぞれのデータは変動量0.2 mmの範囲に収まっているが,1月23日-24日に深度45 cm以浅で最大2.2 mmの変動量が認められた. (地形地質調査) 観測サイトの露頭観察を行ったところ,テフラとクロボク土からなる互層が複雑に重力変形していることが明らかになった.スコリア層とその上位のクロボク土層との境界付近にせん断面が形成されるとともに,クロボク土層内には荷重痕(load mark)に類似する構造が認められた.相対的に透水性の低いスコリア層の上位のクロボク土層が流動することで形成されたと解釈した.土層強度検査棒を用いて粘着力(c)・内部摩擦角(φ) を用いて変形・非変形層の比較をしたところ,前者のcの強度低下が認められた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の鍵は孔内傾斜計を設置し順調に観測できるかにある.観測孔は隣接して2本設置し,30 cm毎に深度1.8 mまで加速度センサで観測することで,15 cm間隔での変動量が計測できるよう設計してある.「研究実績の概要」に記した4月23日に発生したイベントまでに,各センサの変動量は0.7 mm内に収まることから,11月5日の設置以降,順調に計測がなされていることが分かる.また,露頭観察による堆積相の記載,土壌検査棒を用いた土質試験も併せて行うことができている.
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今後の研究の推進方策 |
今後も継続して観測を行う.孔内傾斜計および間隙水圧計は1時間ごとに計測している.また,気象観測装置(雨量計・気温計)による現地観測も開始したので,それらのデータを交えた検討も行う.また堆積相の観察結果と土質試験結果との検討結果を2019年度中に学会誌に投稿する予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度予定した物品費・旅費等を使用したが若干の残額が生じた.残額は次年度購入予定の旅費として使用する.
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