研究課題/領域番号 |
17K01233
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研究機関 | 東洋大学 |
研究代表者 |
渡辺 満久 東洋大学, 社会学部, 教授 (30222409)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 活断層 / 海成段丘面 / 旧汀線高度 / 隆起ベンチ / 撓曲 |
研究実績の概要 |
三陸海岸北部地域・若狭湾沿岸地域・駿河湾~遠州灘~伊勢湾沿岸地域などを主たる調査地域とし、空中写真判読・アナグリフ画像の解析・現地調査によって、海成段丘の分布、旧汀線高度の測定・断層変位地形の確認などを実施した。また、様々な変動地形の記載と記録を行うため、高性能のドローンを購入し、海岸付近の変動地形をより詳細に観察・検討することができるようになった。 三陸海岸北部では、隆起ベンチの有無を確認し、多数の海成段丘面を解析して、それらの旧汀線高度の特徴や段丘面の撓曲のようすを明らかにすることができた。これまでの調査結果も含めて、論文化する段階に達したと考えており、現在、その準備を進めている。若狭湾沿岸地域では、MIS 5eに形成されたと考えられる海成段丘面の旧汀線高度を再検討し、より詳細かつ正確な数値を得ることができた。また、本地域では、ドローンによる地形観察によって、いままで知ることのできなかった沿岸の地形(隆起ベンチの有無)などを確認することができた。こちらも、論文化するうえで十分な資料が蓄積できたと考えている。駿河湾~遠州灘~紀伊半島南部沿岸地域に関しては、段丘面の分布・旧汀線高度の変化の様子などの概要を把握することができた。この地域においても、ドローンの活用によって、これまで観察困難であった地域の地形的特徴を把握できるようになった。この地域の変動地形の特徴については、さらに検討を続けてゆく予定である。 本年度は、昨年度までの調査結果などをもとに、積丹半島(渡辺・小野、2018)や下北半島東部(渡辺、2018)などの研究成果を公表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
全体としては、ほぼ順調に研究は進行しているといえる。ただし、積丹半島と若狭湾沿岸地域の調査結果の公表については、予定よりやや遅れている。その理由は、ドローンの活用によって新たな資料を得ることができたためであり、より完成度の高い報告を行おうとしているためである。本年度中には詳細な研究報告を公表する予定である。 駿河湾~遠州灘~伊勢湾沿岸の調査に関しては、ほぼスケジュール通りに進行している。海成段丘面の分布や高度、それらの変形状態はほぼ明らかにすることができたと考えている。なお、当初から懸念していたように、本地域では、地形編年に有効な試料(テフラ・有機物・生物化石など)の入手が困難であった。このため、地形判読の範囲を拡大し、既存研究で編年が確立されている地域との比較を検討し、成果を得るように努める予定である。駿河湾沿岸では、海底地形の分析も含めて変動地形の特徴を把握しつつあるが、内陸地域の変動地形に関しても検討が必要であると思われる。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに、調査予定地域のほぼ全域を踏査しており、変動地形の概要は把握することができている。今後は、調査成果の整理・公表を行うとともに、駿河湾~遠州灘~伊勢湾沿岸に関してはより詳細な現地調査を実施してゆきたい。具体的には、以下の項目に関する調査・検討を重点的に行う予定である。 ① 三陸海岸北部・若狭湾の調査結果をまとめる。 ② 積丹半島と下北半島東部に関しては、新たな資料が加わりつつある。状況に応じて新たな調査を実施して、隆起ベンチや海成段丘面の撓曲に関する知見を増やすとともに、これまでの研究成果の整理に努めたい。 ③ 駿河湾~遠州灘では、引き続き、海成段丘面の分布・高度・変形の様子を詳細に検討してゆく。これらの地域の地形編年のためには、内陸地域も含めて、既存研究の整理や現地での確認作業を行う必要がある。 ④ ドローンによる変動地形の撮影を行い、貴重な研究成果の蓄積に努める。また、撮影した写真をもとに立体モデルを構築し、変動地形形成の理解を深めたい。
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