研究課題/領域番号 |
17K01236
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研究機関 | 法政大学 |
研究代表者 |
伊藤 達也 法政大学, 文学部, 教授 (60223161)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 脱ダム / 川辺川ダム / 五木村 / 地域計画 |
研究実績の概要 |
当該年度、学会発表、論文発表という形での研究成果はない。これまでの研究の流れとして、韓国の水資源開発問題、利根川の水資源問題を、それぞれ論文の形(「韓国の水辺環境改変事業の特徴-韓国4大河川再生事業を事例に-」地理科学72-3)と、学会での口頭発表の形(「利根川の利水問題」経済地理学会2017年度研究大会)で発表した。「利根川の利水問題」については、現在、経済地理学年報での論文発表を予定しており、4月14日の編集委員会にてフォーラムに掲載されることが決定している。 これらの研究成果は本研究課題と強く結びついており、その比較検討ができたのは収穫であった。一例をあげれば、韓国では公共事業の事業途中での計画変更が日本に比べて容易であることが明らかになった。また、日本と同様、環境保全に対する関心が高くなっているが、韓国の場合、環境保全を目的にした開発計画が数多く行われており、日本における環境保全の考え方とかなり異なっていることが解明された。また、利根川の水資源開発に関わる問題においては、東京都水道局は山間地域の水源保全に大変積極的に取り組んでいるが、それは今や全体の20%しか水供給していない多摩川流域においてであり、残りの80%を供給している利根川の上流域に対する配慮対策がなされていないことが明らかになった。これらの解明点は、まさに本研究課題である上流水源地域の扱いの難しさ、ズレを示していると思われる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究課題においては、当該年度、夏季休暇を利用しての五木村への訪問、聞き取り、春期休暇を利用しての訪問、聞き取りを行った。問題を整理し、次年度の調査の調整することができ、研究計画としては有意義な訪問であった。また、東京において、統計データの整理、新聞記事や雑誌論文をはじめとする各種資料の整理を行った。これらはいずれも次年度に予定している五木村村民への本格的な聞き取りのために不可欠な準備である。次年度は五木村村民への聞き取りを予定しており、その上で学会発表等何らかの成果を出すことができると考えている。 当該年度の問題としては、統計データの整理等が一部予定よりも遅れている点である。主に予定していたのは、五木村の経済面からの把握のためのデータ収集、データ分析であったが、五木村でのデータ収集が部分的にできず、その結果、分析の遅れにつながった。ただ、これは研究内の問題というよりも、本務校における職務との関連で生じた調査日数の不足に伴う遅延である。次年度はこれらの遅れをカバーしながら研究を進めていく予定である。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は五木村村民からの聞き取り調査を予定している。五木村の関係者とは調査を行うことと、その協力の合意を得ている。調査は10月~11月を予定している。調査内容としては、ダム計画が様々ないきさつによって中止となったことに対する感想、ダム計画中止後の五木村の問題、五木村の将来に向けての地域振興のあり方に対する意見などを聞くことである。調査の仕方としては、大学院生10名ほどに調査協力を仰ぎ、五木村村内を手分けして調査する予定である。 問題があるとすれば、村の関係者からはこちらの予定していた調査よりも、かなり多くの村人の意見を聞いてほしいという要望が出されており、予算と時間の関係から、かなりの調整が必要であると考えている。従って、今後、五木村のさらなる調査協力の可能性、近隣地区での調査協力者の募集等も検討していきたい。 昨年度、多少の遅れを見た統計データの整理については、既に五木村の方にデータ収集の協力は依頼済みであり、7月に現地へ赴き、データ収集を行う予定である。分析は大学研究室のパソコンでできることから、データ収集後、計画的に実施する予定である。 そのほかとしては、熊本市、八代市を中心とする川辺川ダム計画反対の市民グループとコンタクトを取り、これまでの経過、今後の五木村との関係の作り方などについてのヒヤリングをする予定である。日程は2019年2月~3月を予定している。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度146,480円の未使用額が発生しているとなっているが、当該年度末の2018年3月28日から30日にかけて、再度五木村を訪問している。その際、研究遂行に際して、専門的知識の提供を求め、一人訪問に随行してもらった。その人への謝礼、研究代表者の旅費等の請求手続きが年度をまたぎ、これらが会計処理されれば、恐らく未使用額は0になると考えている。
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